どっこい生きてる、マックG! 『ザ・ベビーシッター ~キラークイーン~』で20年越しのおかえりなさい

マックG、20年越しの「おかえりなさい」

『ザ・ベビーシッター 〜キラークイーン〜』

 そして『キラークイーン』だ。まず大前提として、1作目はすごく綺麗に終わっている。何をやっても蛇足になると表現していいくらい、まとまった作品だった。その続編を作るわけだから、スタートラインに着いた時点で不利な戦いを強いられるのは目に見えている。しかしマックGは『ターミネーター4』を引き受けたクソ度胸を発揮し、さらにあの頃にはなかった自分の持ち味を最大限に活かす「開き直り」も手にしていた。前作にあった淡い青春要素は薄まった反面、バカさ加減はフルスロットル。ご都合主義の連発ながら、ひたすら瞬間最大風速を重視したギャグの連打(パロディ、下ネタ、音楽ネタ、テロップネタ)をブチ込み続け、最後まで見せ切ってしまう。特に“イメージ映像”のシーンなど、「今日日こんなギャグを!?」と目を疑った。『チャーリーズ・エンジェル』で掴んだものの、大人になるにつれて失われていったマックG節が完全復活したと言えるだろう。やや破綻気味のストーリーに反して、「俺はこういう映画が一番得意なんだ!」と言わんばかりのテンポの良さと強気の姿勢には清々しさを感じた。あの頃のマックGを多感な時期に体験した身としては、20年越しの「おかえりなさい」である。

 気がつけば、かつてマックGとしのぎを削り合った“MTV系監督”たちがNetflixに集まってきている。マイケル・ベイは『6アンダーグラウンド』(2019年)を撮ったし、デヴィッド・フィンチャーも『Mank(原題)』(2020年)が待機中だ。辛い仕事を乗り越えて、バカ騒ぎ映画の達人としてパワーアップした(開き直った)マックGが、Netflixという場で彼らと再び競い合うのが楽しみでならない。どっこい生きてる、マックG!

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■配信情報
『ザ・ベビーシッター 〜キラークイーン〜』
Netflixにて配信中

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる