『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はなぜ熱狂を生んだ? 『北斗の拳』に通じる精神性

『怒りのデス・ロード』はなぜ熱狂を生んだ?

 本作は2015年から2016年にかけて、アメリカ、イギリス、日本など世界各地の映画祭でさまざまな映画賞を受賞したが、驚くべきは第88回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、衣装デザイン賞ほか、10部門でノミネートされ、6部門で受賞を果たしたことだろう。世界中の多くの批評家から非常に高い評価を受け、当時70歳だったジョージ・ミラー監督の、全く衰えないエネルギッジュな創作力に賛辞が送られた。

 もともとミラー監督が作り出した過去の『マッドマックス』シリーズ自体、後世のエンタメに大きな影響力を与えた作品である。例えば文明社会が崩壊した砂漠のような近未来観や、破壊と略奪に明け暮れる暴走族一味、そんな秩序なき世界の中で弱者に手を差し伸べるアウトローヒーローの姿。「お前はもう死んでいる」の決め台詞で有名な少年漫画『北斗の拳』(1983年より集英社の『少年ジャンプ』で連載)は、『マッドマックス2』(1981年)の影響を色濃く受けていることで知られている。集団でバイクを飛ばし奇声をあげるモヒカン頭の暴徒というイメージは『北斗の拳』を通じて世間に浸透しているが、その源流は『マッドマックス』シリーズだ。『怒りのデス・ロード』に登場するウォー・ボーイズは、モヒカンではないが白塗りのスキンヘッド姿で、見た目のインパクトが強い。

 『怒りのデス・ロード』は日本公開から5年目にしてようやく地上波で初放送されるが、映画館で鑑賞済みの人は細部のディテールの再確認に、初見の人は世界中で絶賛された要素はどこにあるのかを確かめるべく、テレビの前で待機していただきたい。まさにテレビで観ながら実況したい、エンタメの王道的映画だ。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
フジテレビ系にて、9月12日(土)21:00〜23:10放送
監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラサウリス
製作:ジョージ・ミラー、ダグ・ミッチェル、P・J・ヴォーテン
製作総指揮:イアン・スミス、グレアム・バーク、ブルース・バーマン
撮影:ジョン・シール
編集:マーガレット・シクセル
音楽:ジャンキーX
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース・バーン、ヒュー・キース・バーン、ロージー・ハンティントン=ホワイトリーほか
配給:ワーナーブラザース
(c)Warner Bros. Feature Productions Pty Limited, Village Roadshow Films North
America Inc., and  Ratpac-Dune Entertainment LLC
日本公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/madmaxfuryroad/

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