『竜の道』王道の復讐劇に見入ってしまう理由 カンテレ制作ドラマの傾向から探る

『竜の道』王道の復讐劇に見入ってしまう理由

 復讐や事件解決、成長物語といった王道のストーリー展開では、登場人物の感情をどこまで掘り下げて描けるかが重要だ。そのようにして作られたドラマがエモーショナルなものになるのは必然であり、そのことが強烈なドラマツルギーの源泉になっている。また、悪く言えば「ベタ」な展開にはスピンオフに発展しやすいという長所もある。同枠が本編と別にチェインストーリーを配信してきたことは理にかなっている。

 残念ながら『竜の道』でチェインストーリーは制作されていないが、同作が復讐劇の王道を踏襲していることに疑いの余地はない。竜一は顔を整形し、経営コンサルタントの和田に名前を変えて源平の息子・晃(細田善彦)に近づく。竜二は、源平の長女・まゆみ(松本まりか)と交際することで家庭内から源平の動向を探る。最終的に源平の命さえ絶とうとする執念は、源平の並外れた警戒心と動物的な勘によって水際で防がれ、そうしているうちに、追い込んでいたはずの竜一と竜二の足元が崩れていく。

 復讐に取り憑かれた2人が泥沼にはまっていく姿は容易に想像できる。それにもかかわらず、バッドエンドを予想してもなお竜一と竜二の復讐劇に見入ってしまうのは、「復讐には代償をともなう」という普遍的な物語の法則がそこに見え隠れするからだ。

 もちろん例外もある。同枠には『まだ結婚できない男』(2019年10月期)など作家性が前面に出た作品もあるが、火9ドラマ特有の演出カラーがあることはたしかだろう。関東よりも関西エリアで高い視聴率を記録してきたカンテレ制作の火9ドラマ。庶民的な文化が根付く関西圏には、笑いに象徴されるような自らの言葉で発信する気質があり、そのことがドラマ作品におけるストレートな感情の発露にもつながっているのではないだろうか?

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『竜の道 二つの顔の復讐者』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:玉木宏、高橋一生、松本穂香、細田善彦、奈緒、今野浩喜、渡辺邦斗、 落合モトキ、西郷輝彦(特別出演)、松本まりか、斉藤由貴、遠藤憲一ほか
原作:白川道 『竜の道』 (幻冬舎文庫)
脚本:篠崎絵里子(「崎」は「たつさき」が正式表記)、守口悠介
音楽:村松崇継
主題歌:SEKAI NO OWARI 「umbrella」(ユニバーサル ミュージック)
オープニング曲:ビッケブランカ 「ミラージュ」(avex trax)
プロデュース:米田孝、水野綾子
演出:城宝秀則、岩田和行、紙谷楓、吉田使憲
制作:カンテレ、共同テレビ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ryu-no-michi/
公式Twitter:https://twitter.com/ryunomichi_ktv

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