『半沢直樹』生放送で明かされた“攻めの演出” 原作からの変更点で予想する今後の展開

『半沢直樹』生放送で明かされた攻めの演出

 残り3話に期待が高まる放送となったが、あらためて今後の展開を予想してみたい。原作の『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社/講談社文庫)では、帝国航空の再建を任された半沢が、債権放棄を迫る国交大臣の白井とタスクフォースにノーを突きつける。ドラマでは第7話で谷川(西田尚美)ら銀行連合とともに、債権放棄の拒否を表明。またここに来て新たなキャラクターの登場も予告されている。

 もともと『銀翼のイカロス』は、半沢が勤める東京中央銀行の前身、産業中央銀行と東京第一銀行の合併によって生じた行内の軋轢が物語の基本線にある。両行の経緯については、これまで会話の中で触れられる程度だったが、「行内融和」は『半沢直樹』シリーズの大きなテーマ。これには、原作者・池井戸潤がバンカーとして過ごしたバブル後の銀行を取り巻く状況が反映されていると思われる。現代に設定を移したドラマ版では、東京中央銀行の合併をめぐる問題に半沢も直面することになりそうだ。

 また、原作で大物政治家・箕部(柄本明)と強いつながりのある地元・舞橋が、ドラマでは伊勢志摩に変更されている。伊勢志摩と言えば、前作で、半沢が再建に尽力した伊勢島ホテルが思い浮かぶ。偶然の符合かもしれないが、半沢と堅い絆で結ばれた同ホテル社長・湯浅(駿河太郎)の登場にも期待したい。箕部との黒いつながりが示唆される常務の紀本(段田安則)や、中野渡(北大路欣也)の元部下で小料理屋の智美(井川遥)も、合併時の秘密を知る人間としてクローズアップされることになるだろう。

 平成の民放ドラマ史上最高の視聴率という伝説を塗り替える勢いの『半沢直樹』。その陰には、俳優陣とスタッフによる、決して妥協を許さない“攻めの演出”があった。伝統芸能を取り入れながら、大胆な翻案によって現代にアップデートされた『半沢直樹』最終盤の幕開けを心して待ちたい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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