『わたナギ』が教えてくれた3つの大事なこと “しょせん他人同士”だから進める一歩

『わたナギ』が教えてくれた3つの大事なこと

 もう一つ、我々の心を楽にしてくれた面白さがある。それは「しょせん他人同士」ということである。このドラマの愛おしさは、それぞれ懸命に完璧なフリをして生きている、実はとんでもなく不器用な「他人」たちが、相手を観察しながら、おずおずと互いの間合いを図りながら、歩み寄り、共に生きていく姿が描かれていることだ。

 最終話の冒頭がなぜか、メイの家の外から中を覗き込むような奇妙な映し方で、メイのプロポーズと驚くナギサの姿を切り取っているように。メイが常におじさん・ナギサの生態を観察し、独白でツッコミ続けるように。視聴者がやたらお茶を熱がるナギサの生態を観察せずにはいられないように。また、会社でチームの皆が馬場(水澤紳吾)さんを観察しているように。彼らはいつも、ある程度の距離感を保ちながら、愛おしげに誰かを見つめている。

 そして、メイの父母だったり、最後のサプライズ、支店長(富田靖子)と卸さん(飯尾和樹)の組み合わせだったりと、互いが心地よく共に生きるために編み出した三者三様の夫婦の形は、傍から見ると独特で、面白くて、なんだかキラキラしている。

 いろんなものを背負い込んで、心も身体も苦しくなった時は、ちょっと周りを見ればいい。きっと誰かが手を貸してくれる。誰かの生き方にヒントをもらえる。

 しょせん他人同士。でも、共に補い合える、頼れる「他人」であるところの一期一会の仲間たちは、私たちの日常を面白くしているのである。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
『私の家政夫ナギサさん 新婚おじキュン!特別編』
TBS系にて、9月8日(火)20:57〜放送(2時間スペシャル)
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる