本郷奏多、向井理、滝藤賢一 『麒麟がくる』戦国の“異端児”を演じる3名の役柄を解説

『麒麟がくる』後半の鍵となる“異端児”たち

足利義昭(滝藤賢一)

 そして最後に紹介するのは、義輝の実弟であり、近衛前久同様、今回が初登場となる“室町幕府最後の将軍”足利義昭(滝藤賢一)だ。家督を継ぐ嫡男以外は仏門に入れるという将軍家の慣例に従い、幼少の頃から奈良の興福寺に預けられ、一条院門跡「覚慶」として日々修行に励んでいる義昭。しかしながら、ある事件をきっかけに、彼の運命は大きく変化することになる。のちに信長と交流を深め(恐らくそこに光秀が絡むことになるのだろう)、さらには反目し、「信長包囲網」の首謀者として何度も信長の前に立ちふさがることになる義昭。今日では「信長を殺した男」ならぬ、誰よりも「信長を殺したかった男」として知られる義昭だが、初回登場時は、意外や意外、庶民に慕われる無私の仏僧として、駒(門脇麦)の前に現れるようだ。

 清廉潔白な身の上であった彼は、いかにして自らの内なる欲望に気づき、どのような心境の変化を辿っていくのだろうか。ちなみに、現在彼が身を寄せている興福寺は、筒井順慶(駿河太郎)が支配する寺社でもある。そう、松永久秀(吉田鋼太郎)は、その勢力を抑えるために主君・長慶から大和国に派遣され、興福寺を望む高台に自らの城・多聞山城を築いたのだ。

 新たな解釈のもと、従来の明智光秀のイメージを刷新することはもとより、実は「戦国時代を室町幕府の崩壊という新たな視点で描く」ことが、大きなテーマのひとつでもあるという『麒麟がくる』。前半戦同様、持ち前の行動力で上記3人をはじめとするさまざまな人物たちのあいだを慌ただしく行き来しながら、「麒麟がくる」太平の世を目指して奮闘していくであろう明智光秀は、果たしてどのタイミングで、信長と行動を共にするようになるのだろうか。そして、光秀の終生のライバルとなる木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、どの時点で彼と相まみえ、その人生に色濃い影響を与えていくのだろうか。天下統一を目指して、諸勢力がいよいよ本格的に動き始める『麒麟がくる』。率直に言って、非常に楽しみなのである。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる