『彼女、お借りします』から見える、アニメと原作の相乗効果 『マガジン』発ラブコメの強さとは?

 『彼女、お借りします』が連載されている『週刊少年マガジン』は、ラブコメ漫画の比率が高く、しかもテレビアニメ化された作品を多く輩出しているのが特徴だ。例えば『山田くんと7人の魔女』(2015年放送)、『徒然チルドレン』(2017年放送)、『五等分の花嫁』、『ドメスティックな彼女』(いずれも2019年放送)など。特に『五等分の花嫁』はアニメ化効果でコミックスの発行部数を大きく伸ばした。現在連載中の漫画でも、将棋を題材にしたラブコメ『それでも歩は寄せてくる』と、『山田くんと7人の魔女』の作者による『カッコウの許嫁』は人気が高い。

 昨今、原作付きアニメの放送で、原作の売り上げが急増するという話は珍しいものではない。劇場用新作の公開が控えている『鬼滅の刃』(2019年)も、テレビアニメ化によって原作コミックスが爆発的に売れた作品である。かといって、原作がライトノベルだろうと漫画だろうと、アニメ化すれば必ず原作の売り上げに結びつくとは限らない。アニメ視聴から入ってきた人が、物語の先が気になって原作に手を伸ばしたり、アニメが気に入って原作を全巻買い揃えたりと、まずはアニメそのものの完成度が高いことが前提条件だ。視聴者がアニメに惹きこまれなければ、原作の方も読んでみたいという気持ちにならないだろう。その意味では、もともと原作自体が人気を博していた上に、完成度の高いテレビアニメの放送で原作の認知度がさらに高まった『彼女、お借りします』は相乗効果が高い成功例といえる。

 アニメの放送は深夜1時25分からと遅い時間帯にも関わらず、Twitterのトレンドに毎週現れるほどリアルタイムで視聴しているファンが多い。ダメダメ大学生の木ノ下和也と、レンタル彼女・水原千鶴の恋模様は果たして今後どんな展開を見せるのか? 連載中の原作共々、この先が気になるアニメだ。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『彼女、お借りします』
MBS・TBS系にて、毎週金曜深夜1:25〜放送中
原作:宮島礼吏(講談社『週刊少年マガジン』連載)
監督:古賀一臣
シリーズ構成:広田光毅
キャラクターデザイン:平山寛菜
色彩設計:石黒文子
美術監督:秋葉みのる
音楽:ヒャダイン
声の出演:雨宮天、悠木碧、東山奈央、高橋李依、堀江瞬
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
(c)宮島礼吏・講談社/「彼女、お借りします」製作委員会
公式サイト:https://kanokari-official.com/
公式Twitter:@kanokari_anime

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