8分の1となってしまった『2分の1の魔法』と『ムーラン』配信の問題点

『ムーラン』配信の問題点

 そして、ここからは日本だけの問題。今回の『ムーラン』の日本でのプレミアクセス料金は、北米の29.99ドルに準じた2980円、税込で3278円となる。その金額設定そのものについては、家族全員で見られること、繰り返し見られることなどをふまえればある程度妥当なものなのかもしれない。しかし、日本のディズニープラスのサービスは北米のように4K HDR映像、5.1ch 音声、ドルビーアトモスなどに現状では対応していない、スペックとしてBlu-rayソフトにも劣るもの。それで同じ料金というのは、やはりおかしいのではないか。

 また、7月に(世界的には)超目玉作品として独占配信された『ハミルトン』には、現時点でもまだ日本語字幕さえついていない。このように、日本のディズニープラスは新型コロナウイルスの影響によって準備不足のまま前倒しでローンチされたと思われる不備がいたるところにある。映画館から配信への重心の移行は時代の流れとして必然なのだろうが、だとしたら、料金だけでなくサービスの環境もグローバル基準と同等のものにするのはコンテンツホルダーとしての義務である。ウォルト・ディズニー・ジャパンは、1日も早くその義務を果たさなくてはいけない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「装苑」「GLOW」「キネマ旬報」「メルカリマガジン」などで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■配信情報
『ムーラン』
9月4日(金)ディズニープラス会員、プレミアアクセスで独占公開
※追加支払いが必要。詳しくはdisneyplus.jpへ
監督:ニキ・カーロ
出演:リウ・イーフェイ、コン・リー、ジェット・リー、ドニー・イェン
オリジナル・サウンドトラック:ウォルト・ディズニー・レコード
日本語吹替版声優:明日海りお、小池栄子
(c)2020 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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