8分の1となってしまった『2分の1の魔法』と『ムーラン』配信の問題点

8分の1となってしまった『2分の1の魔法』と『ムーラン』配信の問題点

 先週の当コラム(参考:劇場版『Fate』3作連続で初登場1位 コロナ禍の「空気」を読まなくてもいい作品?)を、自分は次のような文章で締めた。「今週末にはディズニー配給のアニメ作品『2分の1の魔法』が公開されるが、この状況が続くようなら厳しい。そして、もし『2分の1の魔法』が苦戦するようだったら、日本でも今後の公開予定作品(特にファミリー向け作品)のディズニープラスでの映画館をスルーした配信公開が現実味を帯びてくる」。ディズニーの自社ストリーミングサービス、ディズニープラスにおける『ムーラン』のプレミアアクセス(特別料金)での独占配信が発表されたのは8月24日の午前4時だったので、タイミング的にはあまりにもぴったり、というか準備のためのシステム変更などを踏まえたら水面下ではそれ以前から決定していたに違いないが、結果的に悪い予感が的中してしまった。

 その発表の3日前、8月21日に公開されたディズニー配給のピクサー・アニメーション・スタジオ作品『2分の1の魔法』のオープニング3日間の動員は15万9535人、興収は2億1613万7030円。スタジオの看板である大人気シリーズ作品と比べるのはフェアではないかもしれないが参考までに、同じピクサー・アニメーション・スタジオ作品としては前作となる昨年7月公開の『トイ・ストーリー4』のオープニング3日間の動員は127万人、興収は17億686万円。今回の『2分の1の魔法』は、興収比でその「2分の1」ならぬ約「8分の1」の成績となる。その背景には、新型コロナウイルスの影響、及び全米公開の翌週となる3月13日に予定されていた当初の公開日からの延期に伴う作品の不十分なプロモーションにあることは言うまでもない。

 ちなみに、映画館の営業休止が全米に広がる直前となる3月6日に北米公開された『2分の1の魔法』は、そのたった2週間後という異例のウィンドウ(劇場公開から各メディアにおけるリリースまでの段階的な期間のこと)となる3月20日に北米のディズニープラスで配信されて、昨年11月にサービスが開始されたばかりだった北米のディズニープラスの会員急増に大いに貢献した。ここで留意すべきは、北米では劇場公開を経て会員全員がアクセスできる作品として配信された『2分の1の魔法』と、北米でも日本でも劇場公開を経ずにプレミアアクセス作品として配信される『ムーラン』とでは、まったく事情が異なることだ。

 ディズニーは『ムーラン』をディズニープラス送りにした一方で、本国では今週末の8月28日にX-MENシリーズのスピンオフ作品『ザ・ニュー・ミュータンツ』(日本公開日は未定)を劇場公開する。つまり、新型コロナウイルスによる休業が明けたばかりの劇場への配給において、作品によって対応を分けているわけだ。それ自体はーー6月以降の日本の映画興行でも明らかになったようにーーこの時期にファミリー向けの作品で結果を出すのは困難だという判断に基づくものなのは理解できなくはないが、ディズニープラスでの『ムーラン』のプレミアアクセス配信には市場実験的な意味合いが強いことを、ディズニーの経営サイドは認めている。

 その実験に付き合わされて、『ムーラン』を劇場で観る機会を失ってしまったのは観客だ。さらに言うなら、ディズニープラス独占配信作品として、今後もソフトがリリースされない可能性だってあるだろう。すべてはディズニーの戦略次第というわけだ。また、今回の『ムーラン』のディズニープラス送りによって、将来的にだけでなく、現時点ではっきりとした実害を被っているのが、これまで同作のプロモーションをおこなってきた劇場や宣伝会社だ。先日、フランスの激怒した劇場主が『ムーラン』の巨大な看板を破壊する動画が話題となったが、何ヶ月もの期間、劇場内の一等地に『ムーラン』の巨大ポスターや看板を掲示していた映画館は日本にも多い。

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