『わたナギ』にみる歴代TBS火曜ドラマのエッセンス 新たな“アリ”を生み出す最終回に?

『わたナギ』にみる火曜ドラマのエッセンス

 だが、ここで出てくるのが過去の火曜ドラマでも、ぶち当たった数々の問題だ。ナギサさんが家政夫から専業主夫へと関係性が変わった場合、これまでと同じようにいくのだろうか。プライベートを共有すれば、家事の質も異なってくる。関係が深まることで、逆に保たれていた心地よい距離感が揺らぐことも私たちは火曜ドラマで学んできた。最終回で繰り広げられるトライアル婚では、どんな学びが描かれるのだろうか。

 一方で、田所(瀬戸康史)との未来だって、まだ閉ざされたわけではない。家事が苦手なメイと田所が結婚し、そこにナギサさんが永久就職というエンドだって、イチ視聴者として受け入れる準備はできている。個人的に予告映像にある「トライアル婚」が「トライアングル婚」についうっかり見えてしまったほどだ。

 泣いても笑っても残り1話。ふと、メイが顔も知らない患者のために、懸命に症状を分析していた姿を思い出す。あれは、もしかしたら生きにくさを抱えながら火曜ドラマを楽しみに待つ視聴者に、何が届けられるかを模索する制作陣そのものかもしれない。

 現代の生きにくさに効くクスリ、それはより多くの選択肢を「それもアリ」を受け入れる心の柔軟さ。そして自分自身の「心地よさ」に向き合っていく勇気なのだとしたら、『私の家政夫ナギサさん』はどんな新しい“アリ”な結末を見せてくれるだろうか。それが、また誰かが自分なりの人生を歩む背中を押すものであってほしいと願うばかりだ。

■番組概要
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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