『わたナギ』大森南朋が“ツンデレ”キャラではない新鮮さ “頭ポンポン”シーンが排除された理由

大森南朋が“ツンデレ”キャラではない新鮮さ

 原作には、第1話で、MRの仕事でやり取りをしている男性の年配の医師から、メイが男性医師に性的なサービスをしていると思われ、自分にもそれを要求してくるというシーンがある。そのことで落ち込んだメイを慰めようと、ナギサさんは「頭をポンポン」する。

 漫画の中のメイは、ドラマよりも気が強いキャラクターなこともあり「バカにしないで!!」と突っぱねるのだが、それは原作のナギサさんもメイも、少し強めの性格だからこそ成立するシーンである。しかし、ドラマ版には今のところナギサさんの「頭ポンポン」シーンはないことがほっとさせる。

 昨今のドラマを観ていると、男性から女性への「頭ポンポン」シーンは、その描き方によっては、視聴者をゾッとさせるシーンになっていることも多い。もちろん、「頭ポンポン」に向かうまでに何があるかを詳細にわたって描き、納得できるものであれば、胸キュンを誘うものにもなるだろうが、いきなり出てきたりすれば、男性側の一方的な「女性はこれを求めているのだろう」という思い込みのシーンのように見えてしまう。

 ドラマのナギサさんの場合は、おたがいにのんびりした性質で、またメイとは契約上の関係であり、しかも「お母さん」を目指しているからこそ、個人的には安易にポンポンしないでほしい。寝ぼけたメイから手を握られて、困惑しながらも朝まで握っていてあげるのも、メイからハグされても驚きつつ、ひとりになったときに少しはにかむナギサさんだからこそ、このドラマを楽しめているところが個人的にはある。

 これまでにも奥手で威圧感のない男性の登場人物とヒロインが、段階をおって徐々にお互いの合意を確かめあいながら恋愛に至る物語としては、同じTBSの『逃げるは恥だが役に立つ』があったが、本作も恋愛に至るのかどうかはまだわからないが、お互いが少しづつ歩み寄っていく物語だ。しかも、この物語は契約上、家事をする役割が『逃げ恥』のときとは男女入れ替わってもいる。ドラマのメイとナギサさんの関係性がどう着地するのかも、興味深く見守りたいところである。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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