“時代性”が色濃く現れる!? 『MIU404』『わたナギ』など、人気ドラマの背景にある女性Pの存在

“時代性”が色濃く現れる女性Pドラマ

 また、近年注目の女性Pといえば、NHK連続テレビ小説『スカーレット』の制作統括・内田ゆきCP(制作統括)が挙げられるだろう。

 朝ドラとしては文学的香りの漂う異色作であり、特に中年になってからの戸田恵梨香の「芝居」を後半の見どころとした作りには、圧倒された。ちなみに、ヒロインの夫であり、ライバルとなる陶芸家・八郎を演じた松下洸平を見出したのも、内田P。観に行った舞台の中で、メインの一人をやっていた松下の強い印象が残り、4年間声もかけずにあたためてきたと昨年滋賀県で開かれた本作のトークイベントで明かしている。

アシガール DVD BOX

 また、内田Pといえば、『アシガール』(NHK総合)のプロデューサーとして知られる人。同作では、「時代劇+SF+ラブコメ」という題材を、大河ドラマの脚本経験もあり、歴史モノに強いうえ、『電脳コイル』の一部脚本とノベライズも手掛けている「SF好き」のベテラン脚本家・宮村優子が調理。唯一の不安だったという「ラブコメ」部分については、内田Pと演出の中島由貴・企画した若手ディレクターの「女性4人チーム」が「どうするとキュンとするか」について徹底的にディスカッションを重ね、総力戦で作っていったという。

 同じくNHKでは、よるドラ『腐女子、うっかりゲイに告る。』『伝説のお母さん』と、立て続けに話題作を手掛けたのが、上田明子Pである。

 『腐女子~』のほうは、企画を立ち上げたのが、自身の妊娠中。周りに善意から「子どもを大切にして」と言われるようになったとき、男性は「子どもも仕事も両方大事」が許されるのに、なぜ女性が両方を選んだらいけないのかと疑問を抱いた。そんなときに読んだのが、浅原ナオトの原作『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』で、ゲイで同性の恋人もいるが、結婚して子供を作るという「普通の幸せ」も手に入れたいと願う主人公に共感したことがドラマ化のきっかけだったという(参照:「なぜ女性が両方を選んだらいけない?」が起点に NHKドラマ制作の現場 | ananニュース)。

『おっさんずラブ』(c)テレビ朝日

 また、近年の“女性Pの活躍”といえば、おそらく誰もが思い浮かべるのが、社会現象も巻き起こした大ヒットコンテンツ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の貴島彩理Pだろう。

 父親は周知のように『ずっとあなたが好きだった』、『愛していると言ってくれ』、『ビューティフルライフ』(全てTBS系)などのヒット作を多数手掛けた貴島誠一郎。学生時代からドラマを作るのが夢だったというが、実は入社後3年間体当たりで挑んだバラエティ畑での「とりあえず、やってみてから考える」などをはじめとしたノウハウ・文化が、ドラマ作りに生かされているという。

 とはいえ、企画力=斬新で奇をてらった企画ということではない。『おっさんずラブ』がこんなにも多くの人に愛されたのは、ウケ狙いのネタドラマではなく、“普遍的な純愛”をどこまでもピュアに描く王道の恋愛ドラマだったから。これは貴島P自身が学生時代、友達の家に泊まりに行ったときに、ご飯を作ってくれ、おこしてくれ、着替えも用意してくれる友人に対し、ふと「彼女と結婚しちゃいけない理由って何だっけ?」と思ったことがきっかけだったと、インタビュー(参照:『おっさんずラブ』28歳若手Pが語る、大反響の裏側 「テーマは“働く今どきの男女の恋愛観”」)で語っている。

 そんな貴島Pが目標として掲げるのは、テレ朝の女性ドラマプロデューサーのパイオニアとも言うべき内山聖子と三輪祐見子。

 三輪Pは『遺留捜査』『緊急取調室』『DOCTORS~最強の名医』など、刑事ドラマ・医療ドラマを多数手掛けてきた人であり、内山Pは『黒革の手帖』を大ヒットさせて以降、内山×米倉涼子の『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズを次々に制作してきた人だ。

『妖怪シェアハウス』(c)テレビ朝日

 ちなみに、内山が製作総指揮をとる、現在放送中の『妖怪シェアハウス』のプロデューサーには、飯田サヤカ、宮内貴子という女性Pが名を連ねている。

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