ようやく公開された『映画ドラえもん』新作がハネなかった3つの原因

『ドラえもん』新作がハネなかった3つの原因

 先週末の動員ランキングは、新型コロナウイルスの影響で今年の3月6日から公開が延期されていた『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が、土日2日間で動員33万4000人、興収4億1300万円をあげて初登場1位となった。初日から8月10日(祝)までの4日間の累計は動員63万人、興収7億6100万円。単独でその成績だけを取り上げれば、大ヒットスタートと言っていい数字だ。しかし、当然のようにここでは通常のスケジュールで公開されてきた過去作との対比が不可欠となる。

 昨年の春に公開された『映画ドラえもん のび太の月面探査記』は初週の土日2日間で動員58万6000人、興収6億9600万円、公開3日間では動員64万5000人、興収7億5700万円を記録。一昨年の春に公開された『映画ドラえもん のび太の宝島』は初週の土日2日間(当時の東宝配給作品は土曜日が初日)で動員71万7000人、興収8億4300万円を記録。オープニングの興収比を単純に比較すると、今回の『のび太の新恐竜』は一昨年の49%、昨年の59%ということになる。公開初週が3連休と重なって客足が分散されたことを踏まえても、はっきりと減少傾向が表れている。

 先週の当コラム(参考:ディズニー2020年の超目玉作『ムーラン』、「世界各国で配信リリース」の衝撃)でも指摘した通り、そこには映画館のウイルス予防対策によって客席の稼働率が約半分になっていることとは、直接の因果関係がない。「ハリウッドのメジャー作品の供給が完全に止まっていて、日本映画のメジャー作品も複数作品が公開延期となって、日本全国の劇場が全面的に営業再開してから2ヶ月以上が経って例年ならば書き入れ時のサマーシーズンに入っても、マーケットには有力な新作が圧倒的に不足している」という状況は現時点でも変わらず、現状『のび太の新恐竜』には全国の各シネコンで異例のスクリーン数が割かれていて、劇場で観客を収容しきれないという問題は起こっていない。

 『のび太の新恐竜』が思いのほかハネなかった原因は3つ挙げられる。一つは、本作が先に公開されて好成績を記録している『今日から俺は!!劇場版』や『コンフィデンスマンJP プリンセス編』のような10代、20代がメインターゲットの作品ではなく、ファミリー層がメインターゲットの作品であることだ。多くのシネコンでは、ファミリー層の観客の場合は座席を一席ずつ空けるのではなく、家族単位で座席を販売するなど各映画館によって柔軟な対応が行われているので、「親子で作品を並びの席で見られない」という事態はあまり起こっていないとの報告はある(しかし、これについては周知されていないので正式なアナウンスが必要かもしれない)。しかし、10代、20代の観客と違って「今はまだ、家族連れは映画館に行きにくい」という空気が形成されているのも事実。その背景に、日本全国規模で一向に収まる気配のない新型コロナウイルスの感染状況があるのは言うまでもない。

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