『半沢直樹』吉沢亮が証券の危機を救う 片岡愛之助との因縁の対決も

『半沢直樹』吉沢亮が証券の危機を救う

 ここで救世主として登場したのが、スパイラル社員の高坂圭(吉沢亮)だ。高坂はドラマオリジナルのキャラクターであり、1月に放送された『半沢直樹イヤー記念・スピンオフ企画〜狙われた半沢直樹のパスワード〜』(TBS系)の主人公。同作では、証券部長・半沢のパスワードを悪用して300億円の顧客預金を引き出そうとする陰謀を、フィッシング詐欺の仕組みを応用して阻止した。

 今回、高坂に課せられたタスクは、半沢が証券クラウド上の隠しフォルダに保存したフォックス買収のファイルを削除すること。委員会の職員がパスワードを解読するよりも先に、証拠を消さなくてはならない。まばたきもせず、一心不乱にプログラミングに打ち込む高坂の集中力と、プレッシャーのかかった状況で大仕事をやり遂げる強心臓ぶりに感嘆した。それ以上に、社長の瀬名(尾上松也)に労をねぎらわれ、「チームのおかげです」と返す様子に高坂の成長を感じた。

 大勢の社員が見ている前で、高坂に堂々とハッキングを命じる瀬名の創業社長らしい型破りさや、スピンオフで絆が深まった高坂と浜村(今田美桜)ラインが生きていることも確認でき、高坂を中心とするアナザーストーリーを想像させてくれる。

 言うまでもなく『半沢直樹』のテーマは「倍返し」であり、半沢のバンカーの矜持と理不尽への怒りに裏付けられている。前シーズンでは、父・慎之助(笑福亭鶴瓶)が自殺する原因となった大和田への復讐という個人的な動機もあったが、今作では、さらに広い意味が加わっている。銀行に対しての下克上だけでなく、森山や瀬名、高坂と横暴な銀行の仕打ちに立ち向かう姿は、世代を超えた倍返しと言える。自分だけでなく、周囲の人間や自分より若い人たちのために戦うのが今作の倍返しであり、半沢が森山(賀来賢人)に言う「感謝と恩返し」はそのことを象徴している。

 森山と瀬名の熱意が通じ、フォックス社長の郷田(戸次重幸)は晴れてスパイラル傘下に入ることを承諾。フォックス所有の通販サイト「コペルニクス」の可能性に海外のIT大物も注目し、スパイラル株価は電脳の買収価格を超えて急上昇する。知恵比べに勝った半沢たちが知らされたのは、銀行による電脳への500億の追加出資。力技でねじ伏せようとする銀行に、非力な証券は打つ手なしと思われた……。

 弱者が強者に勝つには、相手の隙を突くこと。そのヒントは、黒崎が散らかしていった書類の山にあった。電脳のスパイラル買収に端を発する一連の出来事で、銀行の横暴の陰で見過ごされてきた最大の矛盾。なぜ、電脳は資金力もノウハウも豊富な銀行に、最初からアドバイザーを頼まなかったのか? いよいよ半沢は、最大の闇に切り込むことになる。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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