『仮面ライダー』トレンド入りにジェームズ・ガンも大喜び 海外での特撮人気とその影響を探る

 ジェームズ・ガン監督がどういう経緯で『仮面ライダー』を知ったかも興味がありますが、なぜ『仮面ライダー』に魅かれたのか? 恐らくアクションと造形ではないかと思います。『仮面ライダー』というのは基本的に肉体アクションです。銃や刀や光線技とかは使いません。ライダーキックという蹴りが決め技というのも象徴的です。

 そして『仮面ライダー』の放送が始まったのは1971年。この年は香港でブルース・リーの『ドラゴン危機一髪』が公開され大ヒットしています。そして1973年に『燃えよ!ドラゴン』、1974年に千葉真一さんの『激突!殺人拳』(クエンティン・タランティーノやキアヌ・リーブスなどファンが多い)とアジアを起点に格闘技系アクションものが注目され始めた時代でもあるのですね。それは銃や殴り合いをベースとするアメリカ映画のアクションとは異なるものでした。

 『仮面ライダー』の流れを汲む特撮ヒーローものは以後、このアクロバチックな格闘技アクションを引き継いでいきます。東映スパイダーマンが、スタン・リーをはじめマーベルで絶賛されたのは、スパイダーマンの殺陣、アクションの素晴らしさでした。先にも述べたようにジェームズ・ガン監督は香港のアクション映画とかも好きなので、仮面ライダーの戦いっぷりを気に入っているのかもしれません。

 もう一つはヒーロー、怪人のデザインです。とにかく毎週毎週新たなデザインの敵が出てくる。毎週違った怪人=モンスターを用意できるって結構すごいことだと思うのです。しかもその造形はユニークかつインパクトがあります。実際、東映の特撮ヒーローのデザインはハリウッド映画にも影響を与えており、プレデターがスーパー戦隊の悪役から、そしてロボコップが日本の宇宙刑事ものからインスパイアされたデザインというのは有名な話ですから。

 日本のアニメに影響を受けたというクリエーターは世界中にいっぱいいますし、今回のジェームズ・ガン監督のように日本の特撮ヒーローが好きだという人も実際には多いのかもしれません。仮面ライダーやウルトラマンで育ったクリエーターが、マーベルやDCの映画を手がけるというのも素敵な話です。故・スタン・リー氏は「人々をワクワクさせる冒険ものやファンタジーに国境はない」と言っていました。ジェームズ・ガン監督の今回のTwitterで、その言葉を思い出しました。

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

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