『ギルティ』の中村ゆりかから目が離せない 松本まりか、菜々緒ら、ドラマで成功する“悪女”の条件

悪女役は知名度アップ!?

 瑠衣と同じく、観ていて「しんどい」と感じてしまったキャラクターがいた。2018年にテレビ朝日系で放送された連続ドラマ『ホリデイラブ』で、仲里依紗扮する主人公・高森杏寿の夫・純平(塚本高史)の浮気相手の井筒里奈だ。“あざと可愛い”と表現された里奈は、キャラクターこそ瑠衣とは違うが、対象者への情念や常軌を逸した行動は、ホラーであり、視聴者に「しんどいなー」と思わせるような存在だった。

 里奈を演じたのは女優の松本まりか。2000年にドラマ『六番目の小夜子』(NHK教育)でデビューし、今年で20年目を迎えるキャリア豊富な女優だ。『ホリデイラブ』以前にも、映画、ドラマ、舞台とさまざまなジャンルの作品に出演していたが、本作での怪演で大きな注目を集め、メディア露出も増えた。今年は『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)、『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)と2本の連続ドラマにレギュラー出演するなど、大きな飛躍を遂げている。

 少し前には、菜々緒もドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ系)や『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(カンテレ・フジテレビ系)など、積極的に悪女役に挑み、大きく知名度を上げた。菜々緒は自身の“強くてきつそう”というパブリックイメージを逆手にとり「悪女をオファーいただけることはすごくありがたい」と前向きに役に挑み、唯一無二の立ち位置を獲得した。

 一昔前は、悪役(女)を演じると、その俳優自身も役柄のような性格だと思われ、誹謗中傷されることが多かったという。現在もSNSの発達により、視聴者の声がよりダイレクトに届きやすくなったことで、さまざまな問題が生じているが、逆にフィクションというものの理解度という意味では、“悪役を演じる人=嫌な人”という考え方の人は昔よりも減っているように感じられる。先日まで放送され大きな反響を呼んだドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)で、主人公・アユ(安斉かれん)を虐める性悪女・玉木理沙を演じた久保田紗友もインターネット上では、その演技力の高さが賞賛されていた。

 瑠衣が爽の元恋人であり、現在も思いが残っている高校の同級生・秋山の義理の妹だということが判明した『ギルティ』。今後さらにドロドロした展開に進むことが想像できるなか、中村演じる瑠衣はどこまで狂っていくのか――目が離せない。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■放送情報
プラチナイト 木曜ドラマF『ギルティ~この恋は罪ですか?~』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週木曜23:59〜放送
出演:新川優愛、町田啓太、中村ゆりか、神尾楓珠、阿部亮平、長井短、結城モエ、筧美和子、大西礼芳、徳永えり、戸田菜穂、小池徹平
原作:丘上あい『ギルティ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』(講談社 ビーラブKC)
脚本:泉澤陽子、大林利江子ほか
演出:河原瑶、林雅貴ほか
主題歌:Toshl「BE ALL RIGHT」(ユニバーサル ミュージック)
スタッフ:チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー:中間利彦(読売テレビ)、黒沢淳(テレパック)、水野督世(テレパック)
制作協力:株式会社テレパック
制作著作:讀賣テレビ放送株式会社
(c)読売テレビ

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