今週公開『劇場』の「劇場」問題 コロナ禍の「着地点」を探る日々は続く

コロナ禍の「着地点」を探る日々は続く

 映画関係者の一人として、自分もその変化に粛々と対応している(具体的には自宅の視聴環境や音響環境を改善するなど)ところだが、最近はどこかで「これは一時的なものではないだろうな」と思い始めている。他の業界同様に、仮にコロナ禍が数ヶ月後、あるいは考えたくもないが数年後に無事通り過ぎたとしても、今回の様々な施策によって見直された無駄(もちろん試写室で映画を観ることは決して「無駄」なことではないが、作品に関する記事などをどこかに発表する予定もない、それを検討する立場にもいない「関係者」がこれまで試写会には大勢押しかけていた)がすべて元通りになるとは思えないのだ。

 昨日発表された、今年3月から5月までの決算で、東宝はグループ全体の売り上げが330億円で、去年の同時期から51%減、最終的な利益は98%減って2億円。松竹はグループ全体の売り上げが86億円で、去年の同時期から63%減、最終損益は43億円の赤字。東宝は宝塚、松竹は歌舞伎と、それぞれ映画以外の大きなエンターテインメント産業も抱えているが、いずれにせよ東宝や松竹のようなメジャーですら未曾有の苦境にある。映画業界に「無駄」を抱える余力は、もうない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「装苑」「GLOW」「キネマ旬報」「メルカリマガジン」などで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■公開・配信情報
『劇場』
7月17日(金)全国ロードショー、Amazon Prime Videoにて配信スタート
出演:山崎賢人、松岡茉優、寛一郎、伊藤沙莉、上川周作、大友律、井口理(King Gnu)、三浦誠己、浅香航大
原作:『劇場』又吉直樹(新潮社刊)
監督:行定勲
脚本:蓬莱⻯太
音楽:曽我部恵⼀
配給:吉本興業
(c)2020「劇場」製作委員会
公式サイト:https://gekijyo-movie.com
公式Twitter:https://twitter.com/gekijyo_movie0417

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