日本人も決して他人事ではない 『SKIN/スキン』が浮き彫りにする排斥主義問題

『SKIN/スキン』が突きつける差別問題

 クラブとの決別と平穏な生活を取り戻すために、ブライオンは反ヘイト団体を運営するダリル・L・ジェンキンス(マイク・コルター)に手助けを頼み、ダリルの協力を得て612日に及ぶタトゥーの除去手術を行うことになる。しかし、「タトゥーを消すこと=更生すること」ではないだろう。仮にタトゥーがあったとしても、本来は彼自身の変化を受け入れることができる社会でなければいけないはずなのだ。

 日本でも刺青を悪とする差別がまかり通っているが、差別問題を主題とする映画において、別の代替差別とも取れるタトゥー差別となってしまっていることが、前述したアメリカの制度的人種差別問題(Systemic Racism)のような差別問題の根深さであり、イスラエル・テルアビブ生まれのガイ・ナティーヴ監督も、現在も差別問題の中でもがき続けている1人なのだろう。

 作品中で、反ヘイト団体主宰であり、主人公ブライオンの更正の協力者であるダリル・L・ジェンキンスが、ヘイト行為を止める3つの方法を示している。

「殺すか、終身刑にするか、転向させるかだ」

 世界中どこへ行っても存在する差別。今回のBlack Lives Matter運動のきっかけになった「I can’t breathe!(息ができない!)」と何度も訴えながら、警官に殺された黒人男性ジョージ・フロイド氏の言葉は、社会的優位な立場にいる人間に対する、弱者である被差別者の訴えとリンクする。

 被差別者たちの言葉に耳を傾けない社会構造は、果たして健全な社会と呼べるのだろうか? 差別問題に向き合わず無関心でいることは、既に加害者となっていると理解していただきたい。

 映画『SKIN』で描かれている問題は決して他人事ではなく、日本でも実際に起きている現実である。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

■公開情報
『SKIN/スキン』
全国順次公開中
出演:ジェイミー・ベル、ダニエル・マクドナルド、ダニエル・ヘンシュオール、ビル・キャンプ、ルイーザ・クラウゼ、カイリー・ロジャーズ、コルビ・ガネット、マイク・コルター、ヴェラ・ファーミガ
監督・脚本:ガイ・ナティーヴ
製作:ジェイミー・レイ・ニューマン、ガイ・ナティーヴ
撮影:アルノー・ポーティエ
編集:リー・パーシー、マイケル・テイラー
音楽:ダン・ローマー
配給:コピアポア・フィルム
2019年/アメリカ映画/118 分/DCP/カラー/スコープサイズ/原題:Skin
(c)2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:skin-2020.com

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