TVアニメ『進撃の巨人』The Final Seasonへ高まる期待 制作会社MAPPAとの相性を読む

 幅広いジャンルの作品を手掛けてきたMAPPAだが、中でも映像化不可能な作品と言われていた『ドロヘドロ』を3DCGと作画のハイブリッドによって、3DCGの過度な表現を抑えつつ、絶妙なバランス感で混沌とした複雑な背景やキャラクターデザインを描いている。初の3DCGキャラクターベースでの制作となった本作だが、作画に溶け込んだ3DCGの高いクオリティはMAPPAの制作陣の作画力を改めて感じさせられた。『進撃の巨人』The Final Seasonでは、林祐一郎をはじめ、瀬古浩司、岸友洋といった『ドロヘドロ』の主要スタッフがそれぞれ、監督、シリーズ構成、キャラクターデザインを担当することが明かされている。『ドロヘドロ』ですでに作画のクオリティが証明されている制作陣とあれば、『進撃の巨人』の醍醐味である立体機動装置による迫力の戦闘描写を描くことはむしろ歓迎だろう。

 また、MAPPAの過去作を見ていくと『残響のテロル』や『どろろ』、『かつて神だった獣たちへ』などダークファンタジー作品、シリアスで繊細な描写を含む作品を多数手掛けてきた。『進撃の巨人』も「巨人」という在存に関してはファンタジー的な要素を多分に含んでいるが、一方でThe Final Seasonでは人類の歴史の反映というシリアスな一面が描かれる。MAPPAにとって実績のあるジャンルの作品であるということはかなり大きい。

 それでは実際にMAPPAの手掛けた『進撃の巨人』The Final Seasonはどうだろうか。2020年5月29日にPVを見ると、当然だが大幅に作画が変更されている。第1期〜3期の間にも徐々に作画に変化が加えられていたが、変更幅としては段違いといったところだ。WIT STUDIOではアニメ的なデフォルメが施されていたが、MAPPAではキャラクターデザインは原作に寄りながらも、光のコントラストや人間や巨人の繊細な表情などが緻密に描かれ、作画全体の立体感が増幅されている印象だ。というのも人類vs巨人の構図から、最終章からは人類vs人類の構図に変わったことで、作品にリアリティをもたせることを重視した結果であり、MAPPAが過去作で培った作画の高いクオリティにほかならない。加えて、「WITさんや荒木監督に全面協力していただき、ここまで準備を進めてまいりました」と林祐一郎監督がコメントしているように、新旧の制作陣同士で綿密な話し合いが続けられていたことから、本作に対する並々ならぬ意気込みを感じるし、何よりWIT STUDIOの制作陣への敬意の表れが成功を確信する何よりの証左だろう(引用:『進撃の巨人』公式サイトSTAFFコメント)。

 WIT STUDIOの意志を引き継ぐこととなったMAPPA。いよいよ最終局面を迎えようとしている『進撃の巨人』の大団円を迎えることができるのか。その答えは最終話まで持ち越すことになってしまうが、私はすでに成功を確信している。

■川崎龍也
音楽を中心に幅広く執筆しているフリーライター。YouTubeを観ることが日課です。Twitter:@ryuya_s04

■放送情報
『進撃の巨人』The Final Season
NHK総合にて放送予定
原作:諫山創
監督:林祐一郎
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:岸友洋
制作:MAPPA
(c)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会 (c)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

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