『ONE PIECE』『NARUTO』『約ネバ』など 日本の漫画やアニメがハリウッドで実写化される背景

 まず、そういった技術的な面や著作権の障害を乗り越えたのが、日本の人気アニメ『カウボーイビバップ』の実写映画化。2018年の11月にNetflixと制作会社トゥモロー・スタジオが共同で製作すると株式会社サンライズが発表し、テレビアニメで監督を務めた渡辺信一郎もコンサルタントとして参加することが決まった。キャストでは、映画『スター・トレック』シリーズのジョン・チョーが主役を演じている。だが、ジョン・チョーの怪我や新型コロナウイルスの影響で、配信は来年になると予想されている。

『君の名は。』(c)2016「君の名は。」製作委員会

 続いては、2016年に日本で記録的な興行を叩き出した新海誠監督のアニメ『君の名は。』。米パラマウント・ピクチャーズと『スター・ウォーズ』シリーズのJ・J・エイブラムス監督の制作会社バッド・ロボットが、東宝と組んで実写映画化を進めている。もちろん、アメリカを舞台にするため、その設定も変わり、田舎に住むネイティブアメリカンの少女とシカゴに住む少年が、お互いの体が入れ替わる体験することから物語が始まっていく設定にしたようだ。現在は、映画『アメージング・スパイダーマン』のマーク・ウェブが監督を務めることになっている。

 その次は、諫山創原作の『進撃の巨人』だ。既に日本では、映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』として2部作で実写化された。今度は、2018年の10月にワーナー・ブラザーズのもとハリウッド実写化が企画され、TVシリーズ『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカと『ハリー・ポッター』シリーズのデヴィッド・ハイマンが製作を担当。さらに、映画『IT/イット “それが”が見えたら、終わり。』のアンディ・ムスキエティがメガホンを取ることになった。ちなみに、ムスキエティ監督は、映画版『The Flash(原題)』でも監督を務め、この作品も今年の4月から撮影に入る予定だった。だが、新型コロナウイルスで撮影が延期されたため、ハリウッド版の『進撃の巨人』が鑑賞できるまでは、しばらくかかりそうだ。

(左)『ONE PIECE』第1巻(英語版)/(右)『ONE PIECE』第95巻

 そして、尾田栄一郎の人気漫画『ONE PIECE』は、集英社とトゥモロースタジオが、Netflixのもと全10話でドラマシリーズ化する予定で、さらに原作者の尾田栄一郎も製作総指揮で参加している。脚本は、『エージェント・オブ・シールド』のマット・オーウェンズが脚本を執筆する。当初は今年の夏に撮影が開始されると思われたが、新型コロナウイルスの影響で延期された。だが、既に10話分の脚本は仕上がっていて、Production Weeklyによると、2020年8月31日に撮影を開始し、2021年の2月8日までに終える予定でいるようだ。

 岸本斉史のヒット漫画『NARUTO』は、2016年からライオンズゲートのもとで製作が進められている。映画『ザ・グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシーが監督を務め、クリス・エヴァンスの初監督作『Before We Go(原題)』のクリス・シェイファー&ポール・ビッグネアが原作に基づき脚本を執筆した。だが2018年の時点では、グレイシー監督は、まだ納得のいく脚本が出来上がっていないと答えていた。ただ、CNBCのメディア・インフルエンサー、ダニエル・リクトマンによると、キャスティング・コールを行う予定だとTwitterで明かしている。

 最後に、サンライズ制作のアニメ『機動戦士ガンダム』は、レジェンダリー・ピクチャーズと組んで、実写化を2018年のロサンゼルスのアニメExpoで発表した。そして、2019年にはTVシリーズ『LOST』や『アンダー・ザ・ドーム』の脚本家・製作者、ブライアン・K・ヴォーンが脚本を執筆することも決まった。そのうえ、レジェンダリー・ピクチャーズの代表として『パシフィック・リム:アップライジング』のプロデューサーのケイル・ボイダーと、サンライズのクリエイティブチームが監修を務めることにもなった。もっとも順調に進んでいるようだが、その後、現在まで新たな情報は入ってはいない。

 この他に、日本の作品がアメリカで映像化される背景には、少年少女時代に日本のアニメをアメリカで鑑賞していたアメリカ人が、映画会社のプロデューサーに昇格し、上記のような作品の実写化に関わるケースもあるようだ。さらに上記の漫画は、中国でも高い評価がされ、北米だけではなく、中国の映画市場でも興行面が見込めるようになったことも大きな要因ではないだろうか?

 上記のように、着々と進んでいる企画がある中で、過去には様々な理由で、日の目を見なかった日本の作品もたくさんあった。ここ10年間で、そんな企画が成立しなかった作品も紹介したい。

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