“プリンス”山崎育三郎と“スター”古川雄大の深い縁 『エール』久志らのモデルとなった人物は?

山崎育三郎×古川雄大の深い縁

 そして、御手洗ミュージックティーチャーのモデル……こちらはなかなか難しい。音のモデルとなった古関金子が豊橋時代に声楽を誰に習ったのか、文献等で詳しく説明がされていないからだ。

 微妙に近い立ち位置にいるのは金子が上京し、裕而と結婚後に入学した帝国音楽学校の声楽部本科で師事した声楽家・ベルトラメリ能子。イタリアに留学し、帰国後はコロムビアの専属歌手となって、軍歌等のレコードも出した人物である。

 とはいえ、彼女をドイツ帰りでありトランスジェンダーでもある御手洗のモチーフと言い切るのはかなり厳しい。ミュージックティーチャーのキャラクターを考えても明確なモデルがいるわけでなく、さまざまな人たちのエッセンスを凝縮して作られた登場人物だと考えるのが妥当だ(そしてそのヴィジュアルは若き美青年・美輪明宏に激似である)。

 久志と御手洗、『エール』では第13週が初対面の場となったが、彼らを演じる山崎育三郎と古川雄大の縁は深い。じつは所属事務所も同じだし、過去にはミュージカル『エリザベート』で暗殺者と皇太子、『レディ・ベス』では吟遊詩人とスペイン王子として共演。また『モーツァルト!』では、主役のヴォルフガング(=モーツァルト)役をダブルキャストとして演じてもいる。これまで培ってきた信頼関係がドラマ内での遊びのある演技に繋がったのだろう。

 山崎、古川に加え、吉原光夫、柿澤勇人、小南満佑子、井上希美といったミュージカル俳優たちがそれぞれの個性を活かして画面に存在する『エール』だが、残念なことに第13週をもって新たな回の放送はしばらく休止となる。

 再開を楽しみに待ちながら、彼らの活躍を心の中で再生したい。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土) (予定)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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