スマホを持ったヒロインの恋愛はどう変わった? 『愛していると言ってくれ』の反響から紐解く

“スマホ”がもたらした恋愛ドラマの変化

 さらに、1991年に放送された鈴木保奈美×織田裕二らの平成版『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)と、伊藤健太郎×石橋静河らの出演で約29年ぶりに再ドラマ化された『東京ラブストーリー』(FOD)では、ケータイ・スマホの有無が様々な場面に影響を与えている。

平成/令和版『東京ラブストーリー』で描く“すれ違い”

『東京ラブストーリー』(c)柴門ふみ/小学館 フジテレビジョン

 インタビュー記事で「令和版」の清水一幸プロデューサーは、「現代でも、携帯電話があるからといって確実に連絡が取り合えるとは思いません」(引用:東京ラブストーリー:29年ぶりの再ドラマ化で「開けにいったパンドラの箱」 親子2世代で楽しむ“狙い”も - MANTANWEB)と語っていたが、その言葉通り、「令和版」ドラマでも様々なすれ違いが見られる。

 固定電話と公衆電話で連絡を取り合っていた平成版では、待ち合わせ場所に来ない相手をひたすら待ちぼうけするシーンがあった。その点、令和版ではスマホによって約束を簡単に反故してしまう。

 例えば、リカ(石橋静河)との食事に向かう途中、さとみ(石井杏奈)からLINEで呼び出されたカンチ(伊藤健太郎)は、リカに電話をし、ウソの理由であっさり食事をキャンセルしてしまう。このあたりの感覚は、スマホでいつでも直接すぐに連絡を取り合えるからこその、約束の軽さなのだろう。しかし、軽く嘘をつき、軽くキャンセルできても、その無計画な嘘がバレたときの怖さを知らないというのも、現代ならではかもしれない。

 また、三上(清原翔)のスマホに表示されたLINEが見えてしまったさとみは、その名前から相手のインスタのアカウントを突き止め、顔写真などを確認する。平成版では突然おでんを持って押し掛ける「おでん女」として恐れられていたさとみが、令和版では期待通り浮気疑惑でのSNSチェック&LINE連発・スマホかけまくり女に変わっていた。

 また、カンチの優柔不断ぶりは相変わらずで、「リカに会いたい」の一言だけ入力し、思いとどまり、ようやく送信したのは翌日というところに、スマホを持つことによって増していく臆病さ・慎重さが見える。

 逆に、平成版ではよく待ちぼうけを食らっていたリカは、スマホがある令和版ではもっと自由奔放で、気がまわり、デリカシーのあるタイプになっている。カンチに自分の位置情報をスマホで送ったり、「明太子買ってきて!」などのLINEは「既読無視」しつつ、カンチのデスクの上に明太子を置いていったり。また、さとみと三上が交際を始めたことを聞き、カンチが動揺しまくる場面では、仕事の連絡が入った風を装い、席を外し、カンチを連れ出してあげる口実にスマホを利用していた。

 三上の女たらしぶりも、スマホの扱い方に現れている。複数の女性と交流があるくせに、LINEを非表示にするなどの小細工をしない「そのまんま」ぶりには自信やポリシーが窺える。さらに、食事を誘い続けていた相手がようやくOKしたかと思えば、自分のスマホを無造作に渡し、「じゃ、連絡先入れといて」と相手に能動的に介入させるラフさとズルさ。モテる男がやりそうなことだ。

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