保と恵の出会いから、環のパリの物語まで スピンオフ回が『エール』に厚みをもたらす?

スピンオフ回が『エール』に厚みをもたらす

 今回の『エール』に関しては、スピンオフのためにセットを新たに作り、追加キャストとして閻魔様役に橋本じゅん、保の古本屋に出入りする喫茶店の店主・木下に井上順、嗣人に金子ノブアキを迎えるなど、徹底して丁寧に作り込んでいた印象だ。過去の映像も内容をリードするために挿入しており、あくまで演出の範疇と受け取れる。実際に今回のスピンオフに対してはネット上で「短編小説みたい」「内容が濃くて、しっかり本編へのアンサー作品になっている」などと好意的な意見も散見された。

 だが、今回は、このスピンオフの流れのまま放送休止に入るというスケジュールに。第11週では裕一にとって非常に重要な家族との和解のシーンを描いていただけに、ここで急に路線を変更しこのまま放送休止に入ってしまうことが惜しい。とはいえ、丁寧に作られたスピンオフは後々本作を強く後押しする存在になるだろう。これらのキャラクターの背景が詳細に語られたことで、より深く関内家やバンブーの2人、環の胸中に目が向くようになる。こうした布石を打つことで、ドラマ再開時の『エール』がより厚みのある作品になることが期待される。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、古田新太、野間口徹、仲里依紗、中村蒼、山崎育三郎、田中乃愛、佐藤誠純 ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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