希望を託された『ストーリー・オブ・マイライフ』 米国では『TENET』がスタンバイ

希望を託された『わたしの若草物語』

 新型コロナウイルス感染拡大による全国の映画館の休業が明けて、最初のハリウッド・メジャー作品、グレタ・ガーウィグ監督の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(ソニー)が6月12日に公開された。新作の供給不足に悩まされていた全国の劇場から手が上がり、スクリーン数は当初の公開日3月27日に予定されていた128スクリーンから大幅に増えて約300スクリーンに(今後、340スクリーンまで拡大される予定だという)。6月14日までの3日間の興収は5415万1340円。ウイルス対策による座席の減少をふまえても、スクリーン数からすると物足りない数字ではあるが、とりあえずは平常化へとまた一歩前進したことを喜びたい。作品の評判も極めて良好で、このまま劇場鑑賞への抵抗が順調に薄れていけば、今後の高推移も期待できるだろう。

 日本映画製作者連盟は6月15日、5月の主要12社の興行収入の合計が前年同月比で99%減少したことを発表した。4月の興行収入は約6億円。5月はそこからさらに7割減って約1億円。5月下旬まで全国ほとんどの映画館が休業していたわけだから当然の数字ではあるが、こうして改めて数字を突きつけられると言葉を失うしかない。

 アメリカでも大手シネコンチェーンがようやく営業再開へと動き始めていて、それに歩調を合わせるようにクリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』の全米公開日が当初の7月17日から2週間だけ遅れて、7月31日に決定した。結果的に、アメリカの映画館は日本よりも約1ヶ月早い3月中旬に休業期間に入っていたが、その全国的な再開も日本よりも約1ヶ月遅く7月に入ってからとなる。1年の3分の1となる4ヶ月分がほぼ丸ごと吹っ飛んだわけだが、もちろん、それだけでは終わらない。全米最大のマーケットであるロサンゼルスを含むカリフォルニア州の映画館では、営業再開後も当面、1スクリーンあたりの客席稼働は25%まで、収容人数は100人までというガイドライン(https://covid19.ca.gov/pdf/guidance-family-entertainment.pdf)が義務付けられることになる。

 『TENET テネット』を配給するワーナー・ブラザーズは、2億ドル(約215億円)以上に及ぶ製作費に見合う興収を得るために公開の大幅延期を検討していたとのことだが、最終的には早期の劇場公開を主張するノーランに折れるかたちとなった。それは、2002年の『インソムニア』以来8作品(2006年の『プレステージ』は世界配給のみワーナー)、20年近く続いているワーナーとノーランの信頼関係、そしてこれまで残してきた実績があってのことだろう。

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