『エール』歌姫・環を惹きつける説得力 “過去”の相手・金子ノブアキは最良のキャスティング?

金子ノブアキ『エール』でピッタリの役?

 金子が朝ドラに登場するのは、2011年に放送された『おひさま』に続いて二度目だ。こちらではレギュラーで出演し、ヒロインの“初恋相手”という大役を好演していたことが記憶に残っている。また、現在放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』にも金子は出演中。NHKとは何かと縁が深い印象だ。そんな、現代劇から時代劇までなんでもござれの金子だが、個人的にはやはり『クローズZERO II』(2009年)での姿がいまだに鮮明に記憶に残っている。彼が演じたのは、最強の不良集団・鳳仙学園のトップ。荒くれ者だらけで統率力のない鈴蘭男子高校とは違い、彼は学園を統べる存在だ。ここでも求められたのは、並々ならぬカリスマ性だったのだろう。思い返してみれば、彼の下につく不良役として、綾野剛や三浦春馬が顔を揃えていたのも印象深い。ちなみに、昨年公開された『HiGH&LOW THE WORST』でいえば、志尊淳の役がこれにあたる。

 ミュージシャンとしての顔も持つ金子だが、彼はこの『クローズZERO II』への出演を機に、一気に映画界にも活躍のフィールドを広げた。現在までに、俳優としても実に豊かなキャリアを持っているのだ。『新宿スワン』シリーズ(2015年〜2017年)や『ギャングース』(2018年)などでの荒々しく、掴みどころのないミステリアスなイメージの人物を演じることが多いが、Netflixオリジナルドラマ『Followers』において、主演の中谷美紀を支えるマネージャー役を愛らしく好演していたのも多くの方にとって記憶に新しいだろう。

 「ミュージシャン」「俳優」という枠にくくることができない存在が、金子ノブアキだ。『blank13』(2018年)、『MANRIKI』(2019年)には俳優として参加する一方で、音楽も担当している。彼のことは、「クリエーター」とでも呼ぶのが正しいのだろうか。これらから考えられるに、『エール』で双浦環の軌跡を垣間見せてくれる存在として、金子のキャスティングは最良のものと思えるのだ。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
NHK総合にて、2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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