『15年後のラブソング』ジェシー・ペレッツ監督が明かす、イーサン・ホークとの意外な関係性

『15年後のラブソング』監督が語る

「実は僕はイーサンのことが嫌いだったんだ(笑)」

ーー本作を彩る音楽は、どれもシーンにぴったりとハマっていて、本作の主役と言っても過言ではありません。楽曲選定作業はどのように進めたのですか?

ペレッツ:撮影は2017年の4月と8月に行ったんだけど、その年の2月には作曲家のネイサン(・ラーソン)に書き下ろしをお願いしていたよ。だから撮影時には、サウンドトラックの鍵となるような曲が見えていた。当然、その時点ではどういう作品になるかわからなかったけれど、こんなにも多くの人が曲を書いてくれたことに感動だったね。あとは、タッカーの設定が“あまりよく知られていないアーティスト”だったから、メインストリームな曲ではいけないわけで、そこからそういった感じの音質のものを選んだ。上手にプレイしたようなよくできた楽曲よりも、ミュージシャンとしてのタッカーを考えて、そのときのエモーションや雰囲気を重視したんだ。製作陣で大論争になったのが、イーサンに劇中でどの曲を実際に歌ってもらうか。これもいろいろとバトルがあった後に、僕とイーサンが推した楽曲が最後に勝ったよ。タッカーがミュージアムのシーンで歌う曲だね。

ーー監督は、元レモンヘッズのメンバーということですが、タッカー・クロウという人物を描く上でご自身の体験や経験を参照されたのでしょうか?

ペレッツ:僕自身バンドにはいたけれど、高校で結成して大学に進学したときに、映画を作りたいという思いがあったし、ミュージシャン気質ではないと思ったから、大学でやめたんだ。でも音楽はずっと好きだし、音楽の世界に身を置いていたこともあって、だからこそこの作品に惹かれたんじゃないかと思う。ただ面白いのは、この映画のプロデューサーたちはみんな音楽が大好きだけどバンド経験がないんだよね。タッカーの大ファンなダンカンは、楽曲を深読みして自分なりの解釈をタッカーにぶつけてしまうけど、タッカーは「そんな思いで作ったんじゃない」と言う。これは意外と多くのミュージシャンの正直な気持ちを代弁していると思うんだ。これはやはり一緒に作品を製作している彼らからは出てこない言葉だから、ミュージシャンであった僕の中から出てきたものじゃないかな。全部がファンタジーではなく、リアルを付け加えることができたよ。

ーーイーサン・ホークは、『ブルーに生まれついて』などの映画で素晴らしい歌声を披露しています。彼の歌声の魅力について教えてください。

ペレッツ:実は1996年に僕もイーサンもたまたま同じ時期にニューヨークに住んでいた。割と近いグループで遊んでいて、何回か会ったこともあったんだ。多分イーサンは当時僕のことを認識していなかったと思うし、実は僕はイーサンのことが嫌いだったんだ(笑)。それはたぶん、当時売れ始めていたイーサンにジェラシーを感じていたからだと思うんだけど、『6才のボクが、大人になるまで。』の辺りから彼の大ファンになったよ。それ以降の彼の出演作のチョイスも本当に素晴らしいよね。今は、僕と彼の子どもたちが同じクラスに通っていて、パパ仲間だよ。僕は子どもの送り迎えのときにイーサンに気がついたんだけど、96年に会って2時間語った相手が僕だったなんて、きっと気づいてないだろうなと思っていたんだ。この作品に関しては、脚本を読んだイーサンから、連絡をくれてランチをしたんだ。そのランチが3時間伸びて、20年ぶりに本格的な会話をしたよ。ランチが終わる頃に僕が「子どもが友達の誕生日パーティに行っているから迎えにいかなきゃ」と言ったら、イーサンも「僕もだよ」と、2人共出て行ったら、なんとそれが同じパーティだったんだ(笑)。そこから、1年くらいして撮影に入ったんだけど、それまでの間もパパ仲間として、週に3度くらいは会ってこの映画の話をしていたよ。イーサンは、音楽が好きだし、歌うのも好きだし、ギターも大好きで、なかなかいいボーカルだった。『ブルーに生まれついて』ももちろん観ていたし、イーサンが他の作品で歌った楽曲も送ってくれて、事前にどんな歌声なのかも聞いていた。ネイサンがレコーディングを一緒にやったんだけど、彼の一番いいボーカルを引き出してくれて、クラシックに上手というよりも、感情に寄せた部分を重視してレコーディングした。本当にイーサンとの仕事は楽しかった。もう一度仕事がしたいね。

■公開情報
『15年後のラブソング』
新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中
監督:ジェシー・ペレッツ
原作:ニック・ホーンビィ
出演:ローズ・バーン、イーサン・ホーク、クリス・オダウド
配給:アルバトロス・フィルム
提供:ハピネット/ニューセレクト
後援:ブリティッシュ・カウンシル
2018年/アメリカ・イギリス/英語/97分/シネスコ/デジタル5.1ch/原題:Juliet, Naked/日本語字幕:松浦美奈
(c)2018 LAMF JN, Ltd. All rights reserved.

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