唐沢寿明のユーモラスな人柄が溢れる 『エール』で残した父としての生きざま

唐沢寿明、『エール』でユーモラスな人柄発揮

 そんな裕一思いの三郎ではあるが、一家の主としては情けない部分も散見された。息子の力になりたい、物事をうまく収めたいと奔走するも、実は成功したことはない。裕一と音との結婚話のときには、「俺に任せとけ!」と啖呵を切ったにも関わらず話は進んでいなかった。店の経営も軌道に乗らず、騙されて経営が傾いたことさえある。裕一には特別に目をかけ大切にしていたが、そのことで弟の浩二(佐久本宝)から兄に甘すぎると度々指摘を受けていた。福島での古山家は全てが良好で理想的な家族であったかというと、決してそういうわけではなかった。三郎は自身の力で境遇を切り開くこともできなかったのだ。だが、その経験は裕一への期待と愛情に変わる。三郎は自身が不甲斐ないぶん、裕一を自身の考えに縛り付けることなく自由に羽ばたかせ、才能を開花させた。

『エール』第11週より

 思えば裕一と三郎の間にはいつも特別な“空気感”があった。母親のまさ(菊池桃子)や浩二とはまた違った深い繋がりを感じさせる瞬間が幾度となくある。第54話で三郎が裕一を呼び出したシーンも、この特別な関係を感じさせる瞬間の一つだろう。窪田と唐沢だからこその温度感はさらに熱を帯び、臨場感のあるものとなる。2人が築きあげてきた「古山親子」の姿は、多くの人に“親“と“子”の絆について改めて考えるきっかけを与えてくれたことだろう。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、唐沢寿明、風間杜夫、菊池桃子、佐久本宝、マキタスポーツ、柿丸美智恵 ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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