『エール』は“契約”が物語の大きなテーマに? 裕一と音の二人三脚の歩みを振り返って

『エール』は“契約”が物語の大きなテーマ?

 『エール』は喜劇仕立てになっているからだいぶ緩和されているが、借金のかたに養子に出された裕一の境遇はかなりヘヴィーである。そういえば、福島の実家はどうなっているのだろうかと思ったら、次週第11週では久しぶりに福島の家族が登場するようだ。

 こうして振り返ると、裕一の人生は契約書に翻弄されていたといえるだろう。人生には契約書がついてまわるものとはいえ、『エール』ではなぜこんなに契約書関係のエピソードが多いのかその理由はわからない。ただ、そのわりには、裕一と音の婚姻届という契約書は出てこない。ふたりの愛は契約書とは関係ないのであろう。愛とは契約ではないということを感じさせてくれるふたりが二人三脚でがんばった結果、一方的な契約で苦しめられるのではなく、作曲の才能で契約の縛りから逃れることができた。モデルの人生をなぞるとすれば、これからの裕一はヒット作家として順風満帆なはず。二度と契約書に悩まされることがないといいと思う。

■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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