『過保護のカホコ』の高畑充希はなぜ愛される? 新たなヒロイン像を生んだ原点を振り返る

『過保護のカホコ』高畑充希の原点を辿る

 そんなカホコの魅力をさらに引き出しているのが、竹内演じる麦野の存在だ。麦野が視聴者目線で、ある種“ボケ”のカホコにツッコミを入れ、バイトなどの試練を与えることで、カホコのピュアさを応援したくなるものに変えていく。一方で、麦野自身が抱える心の痛みは、カホコのピュアさによって癒されていく。そのお互いを補完し合い、徐々に惹かれ合っていく関係性が実に心地良く、カホコの「愛される」力が視聴者にも伝わる。

 そしてもちろん、カホコは高畑の演技力があってこそ成立するキャラクターだ。これまで培った高畑の自然な演技を封印して、何もできないと言うより、何も知らないピュアな女子大生をデフォルメして演じる面白さがコメディとして本作を成立させている。一方で、「なぜ仕事をするのか?」「なぜ結婚するのか?」など、普遍的な社会の疑問をストレートに投げかけ、視聴者の価値観を揺さぶる怖さもある。

 そうしたデフォルメにとどまらず、演技の細やかさも光る。これまで厳しい言葉をかけられたことないカホコが、自分を否定される言葉に、ショックで頭の中が混乱したり、感極まった際に、必死に思いを伝えるときのふと見せる「人間らしい」表情が本作をよりエモーショナルなものにしている。極端な演技だけでなく、人とは違う「間」であったり、会話のズレでその内面を見せるテクニックが求められるカホコ。それを見事に演じ、コメディ的作品である本作を感動へ誘うのは、高畑だからこそできることだろう。後の『忘却のサチコ』や『同期のサクラ』に引き継がれる、新たなヒロイン像を生んだ原点の作品を、この機会に改めて堪能したい。視聴者もきっと愛くるしいカホコの姿に思わず、「過保護」になってしまうはずだ。

■放送情報
『過保護のカホコ』
日本テレビにて放送(関東ローカル)
6月6日(土)14:55〜17:00
6月13日(土)14:00〜17:00
6月20日(土)14:00〜15:00
6月27日(土)14:00〜16:05
出演:高畑充希、黒木瞳、竹内涼真、佐藤二朗、三田佳子、平泉成、時任三郎
脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:大平太、田上リサ
演出:南雲聖一、日暮謙、伊藤彰記、明石広人
制作協力:5年D組
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ

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