水野美紀に江口のりこも 確かな実力で光る40代のバイプレイヤー女優の活躍

40代のバイプレイヤー女優たちの活躍

キリリとした瞳の強さで観る者の心を射る山口紗弥加

 キリリとした瞳が印象的な山口紗弥加(40)も多くの作品で存在感を示してきた。1994年にテレビCMと、ドラマ『若者のすべて』(フジテレビ系)でデビューを果たし、その後も『おいしい関係』(フジテレビ系)、『闇のパープル・アイ』(テレビ朝日系)、『可愛いだけじゃダメかしら?』(テレビ朝日系)など多くのドラマへ出演してきた山口。1998年には歌手デビューし、バラエティ番組でも活躍するなど、アイドル女優としてのイメージが強い時期もあったが、それも山口の器用さゆえだろう。方向性に迷い、一時は芸能界を辞めようと思っていたと公言している山口だが、初舞台となった野田秀樹の『オイル』(2003年)を皮切りに、蜷川英雄、いのうえひでのりらの演出作品で経験を積み、女優としてのやりがいに目覚めていった。

 近年では、強すぎた責任感に押しつぶされる経験を経てさらに大きくなる新生児科医を、強さのなかに繊細さを内在させて演じた『コウノドリ』シリーズ(TBS系)の新井恵美役や、同じ医療ものでも、淡々としつつユーモアを感じさせ、奥に秘めた女性としての悩みに共感を集めた『ラジエーションハウス』(フジテレビ系)の黒羽たまき役でも印象を残した。意外なことにドラマ初主演は18年の復讐物語『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)。昨年の主演ドラマ『絶対正義』(東海テレビ・フジテレビ系)でも鋭い眼光で圧倒し、主演作における輝きにも惹きつけられるが、バイプレイヤーとして欠かせない女優である。現在は菅田将暉、小松奈々主演の映画『糸』が公開待機中。

どこか浮世離れした空気に独特のユーモアが滲む江口のりこ

 4月に40歳を迎えた江口のりこも独特の個性でポジションを築いている。2000年に劇団東京乾電池に入団。一般への認知が広まったのはオダギリジョー主演、麻生久美子共演によりコアなファンを獲得したドラマ『時効警察』シリーズ(テレビ朝日系)でのサネイエさん役だ。三木聡を中心に、岩松了、園子温、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、福田雄一、大九明子、今泉力哉など個性の光る脚本家、演出家が生み出す世界観のなかで、ふせえり演じる又来さんとの絶妙なコンビ感で人気を博した。

 近年はドラマ『コウノドリ』シリーズ(TBS系)で、医師とは異なる立場で患者に寄り添うメディカルソーシャルワーカーの向井祥子役で作品を支え、石原さとみ主演の『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)では、一見ただの堅物に映る校閲部の藤岩さんに愛らしさを加えた。また昨年放送され高い支持を得た多部未華子主演作『これは経費で落ちません!』(NHK総合)でも、クセの強い帰国子女、麻吹美華を、回数が進むごとに物語に欠かせない愛すべき登場人物へと成長させていった。

 映画でも4時間を超える異色作『いぬむこいり』でのファンキーな武器商人、ロングヒットとなった『愛がなんだ』(2019年)での最低男のマモル(成田凌)をも軽くあしらう年上の女性、『羊とオオカミの恋と殺人』(2019年)での謎に満ちた死体処理人など、その個性を十分に生かしている。ちなみに映像デビューからまだ数年の2004年に主演を務めたタナダユキ監督作『月とチェリー』でも、江口らしいクールさと、知らぬ間に相手を引き付ける愛らしさがすでに十二分に出ていた。また、NHKワンセグ2にて放送され、シーズン3まで続いたミニドラマ『野田ともうします。』の主人公・野田も、どこか浮世離れしたような江口の魅力を楽しめる。新作としてはスタートが待ち遠しいドラマ『半沢直樹』(TBS系)の新シーズンに参戦。亀梨和也主演の映画『事故物件 恐い間取り』が8月公開予定。

 ほかにも池谷のぶえ(49)、堀内敬子(49)、平岩紙(40)らがいる40代のバイプレイヤー女優たち。確かな演技力と個性を発揮しながら、作品世界を支え押し上げて輝く彼女たちの活躍から、今後も目が離せない。

※記事初出時、一部に記述の誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
『M 愛すべき人がいて』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15~24:05放送
ABEMAにて、独占配信
出演:安斉かれん、三浦翔平、白濱亜嵐、田中みな実、高嶋政伸、高橋克典、久保田紗友、河北麻友子、田中道子、市毛良枝、新納慎也、傳彩夏、上野なつひ、水江建太
原作:小松成美『M 愛すべき人がいて』(幻冬舎刊)
脚本:鈴木おさむ
企画:藤田晋(ABEMA)
ゼネラルプロデューサー: 横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)、谷口達彦(ABEMA)、山形亮介(角川大映スタジオ)、佐藤雅彦(角川大映スタジオ)
アソシエイトプロデューサー:川島彩乃(ABEMA)
演出:木下高男、麻生学
主題歌:浜崎あゆみ「M」(avex trax)
制作:テレビ朝日
制作協力:角川大映スタジオ
(c)テレビ朝日/AbemaTV,Inc.

ドラマ24『浦安鉄筋家族』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12~放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:12~放送
地上波放送終了後、動画配信サービス『ひかりTV』『Paravi』で配信
出演:佐藤二朗、水野美紀、岸井ゆきの、本多力、斎藤汰鷹、キノスケ、坂田利夫、染谷将太、大東駿介、松井玲奈、宍戸美和公、滝藤賢一
ゲスト:広瀬アリス、MEGUMI、バッファロー吾郎A、ぺこぱ・シュウペイ
オープニング・テーマ:サンボマスター「忘れないで 忘れないで」(ビクターエンタテインメント / Getting Better)
エンディング・テーマ:BiSH「ぶち抜け」(avex trax)
原作:浜岡賢次『浦安鉄筋家族』(少年チャンピオン・コミックス)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:藤田絵里花(テレビ東京)、神山明子
監督:瑠東東一郎、吉原通克、諏訪雅、松下敏也
脚本:上田誠、諏訪雅、酒井善史(ヨーロッパ企画)
制作:テレビ東京、メディアプルポ
製作著作:「浦安鉄筋家族」製作委員会
(c)浜岡賢次(秋田書店)1993・(c)「浦安鉄筋家族」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/urayasu/
公式Twitter:@tx_urayasu

ミニドラマ『きょうの猫村さん』
テレビ東京系にて、毎週水曜深夜0:52~0:58(全24回)
Paraviにて、毎週地上波放送後に配信
原作:ほしよりこ『きょうの猫村さん』(マガジンハウス刊)
出演:松重豊
<猫村さんの大切な人>濱田岳
<家政婦紹介所で出会う人たち>石田ひかり、市川実日子
<犬神家で出会う人たち>松尾スズキ、小雪、池田エライザ、水間ロン、染谷将太
<お買い物で出会う人たち>安藤サクラ、荒川良々
監督:松本佳奈
脚本:ふじきみつ彦
主題歌:「猫村さんのうた」(作曲:坂本龍一/作詞:ユザーン/歌:松重豊)
音楽:篠田大介、坂本龍一
プロデューサー:濱谷晃一(テレビ東京)、千原秀介(AOI Pro.)
製作著作:テレビ東京
制作協力:AOI Pro.
(c)テレビ東京 (c)ほしよりこ/マガジンハウス
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kyouno_nekomurasan
公式Twitter:https://twitter.com/tx_nekomurasan

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる