田村淳が語る、海外ドラマと『ブラックリスト』の魅力 「僕のなかのヒーロー像が変わった」

田村淳が語る『ブラックリスト』の魅力

「奥さんが持ってきた、『ブラックリスト』」

――ところで『ブラックリスト』は、いつ頃、どんなきっかけで観始めたんですか?

淳:どのシーズンだったかまでは覚えていないんですけど、『グレイズ・アナトミー』のあるシーズンを観終わって、「次、何観ようか?」と奥さんと話してたときに「これ、面白そうじゃない?」って持ってきたのが、『ブラックリスト』だったんです。観始めてすぐに、「これは面白いぞ」と思って。最初からいきなりのめり込めるドラマって、意外と少ないと思うんです。大体3話ぐらいまで観て、ようやくキャラクターとかが馴染んできて、「このドラマはこういう面白がり方なのね」とわかる作品が多いというか。そういう中で、『ブラックリスト』は、もう1話を観ただけで、すごいシンプルに序章が終わったなという感じがあって……。

――大まかなプロットというか、各話の構成とその面白さは、すぐに理解できますよね。

淳:そう。“犯罪コンシェルジュ”として有名なレッドが提供する情報をもとに、リズ(エリザベス・“リズ”・キーン。もうひとりの主人公でFBIのプロファイラー)をはじめとするFBIの特別チームが事件を捜査するっていう。そういう意味では1話完結っぽいんだけど、全体の伏線みたいなものは、ちゃんと走らせているんですよね。そこが観ていてハマっちゃうところだと思います。あと、個人的には、銃撃シーンとか激しいシーンの見せ方が、結構ポップなところが好きなんですよね。音楽の乗せ方とか映像の見せ方が結構ポップというか、すごい心地良くて観ていて全然疲れない。だから結構気軽に観ることができるし、あんまり観る人の性別とか年齢を気にしないところがあるんじゃないかな。

――確かに。テンポ感がすごい良いんですよね。割とサクサク話が進んでいくところがあって。

淳:もったいつけたところが全然ないというか、出し惜しみしないで、どんどん話が展開していくんですよね。そこは、すごく小気味いいなって思います。だから、どのシーズンのどのエピソードから観ても……もちろん、最初から通して観たほうが楽しめるけど、個性的な犯罪者が登場して、その事件をレッドとチームのみんながどういうふうに解決していくのかみたいな見方をすれば、どのエピソードから観ても、普通に楽しめると思うんですよね。

「僕のなかのヒーロー像が変わった」

――ちなみに、お気に入りのキャラクターはいますか?

淳:まあ、全員ひっくるめてチームなので、ひとりに特化するみたいな見方はあんまりしてないですけど、チーム・リーダーのハロルド・クーパー(ハリー・J・レニックス演じるFBI特別チームのリーダー)は、いなくならないでほしいですよね。僕はハロルドのリーダーならではの葛藤みたいなものが好きなので。

ハリー・J・レニックス演じるハロルド・クーパー

――チームのリーダーではあるものの、ある意味、中間管理職的な立場でもあって……。

淳:なんか板挟みになっている人を見るのが、個人的に好きなのかな(笑)。そういう立場の人って、どっちつかずになると気持ち悪いですけど、ハロルドの姿勢はすごく好感が持てるというか、ちゃんと一本筋が通っているような気がするんです。そういう人が、上と下に挟まれて、どういう態度を示すのかっていうのは、すごく感情移入して観ているかもしれない(笑)。

――リズをはじめとするチームの面々は、シーズンを経るごとに、いろいろとブレブレになってきているところも……。

淳:そうですよね(笑)。ハロルドがいなくなったら、チームそのものが立ち行かないというか、彼がいなかったらドラマ自体が成立しないぐらい、実は重要な役どころだと思います。あと、正義と悪が混在する感じって『ブラックリスト』のテーマのひとつだと思うんですけど、ハロルドは、そこに自分なりの定義がちゃんとあると思うんですよね。白黒つかないところも、ちゃんとわかっているというか。でも、リズとかは、どうしても自分の感情とかで、突っ走ってしまうところがあって(笑)。やっぱり、ハロルドがいなきゃダメですよね。

――(笑)。ジェームズ・スペイダー演じるレッドについては、どうですか?

淳:レッドはもう、これまで僕が見たことのないタイプのヒーローというか、彼を見てから、僕のなかのヒーロー像が変わったぐらい、インパクトの強いキャラクターです。犯罪者は犯罪者なんだけど、どこか愛嬌があって……シーズン6ぐらいから、どんどん人間味みたいなものが出てくる。

ジェームズ・スペイダー演じるレッド

――そうですね(笑)。

淳:「ちょっと人間味を出し過ぎなんじゃないかな?」と僕は思っていたんですけど、それはやっぱり、自らの死を覚悟したがゆえのことだったのかもしれないし……でもやっぱり怖いところは、すごい怖いんですよね。僕としては、彼の行動の全部を理解してあげたいんですけど、人の追い込み方とか、ちょっと常軌を逸したところがあったりして、やっぱり全部を理解するのは無理だなと思ったり。そうやって心が離れそうになっても、また好きになっていく感じとか、そういうところが観ていて飽きないところなのかもしれないです。

――徐々に明らかになってきたレッドの過去を鑑みるに、なかなかの修羅場を潜り抜けてきたようですし……。

淳:その修羅場というのも、ただの修羅場じゃなくて、人間性を問われるような修羅場、善悪の定義を超えた修羅場だったと思うんです。だから、観ているこっちも、だんだん善悪の定義がわからなくなってくるところがあって……犯罪者を逮捕したら、それで終わりなのかとか、正義って一体何なのかとか。

――レッド自身が、指名手配中の犯罪者ということもあるし、いわゆる“勧善懲悪”の話ではないんですよね。

淳:そう。短期的に見たら悪でも、長期的に見たらむしろ善だったとか……そういう修羅場をいくつも見てきたからこその人間性というか、そういう意味で、僕はレッドに新しいヒーロー像みたいなものを、すごく感じているんですよね。

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