『いいね!光源氏くん』は千葉雄大×伊藤沙莉だったから成功した らしさ溢れた有終の美を振り返る

『いいね!光源氏くん』が有終の美

 光は本当に大切なものを知った。雅で愛くるしいチャーミングな趣はそのままに、優しさが加わった微笑みに、きちんと“相手へ”向けられた気持ちが伝わった。そして中将。「自分は源氏の添え物である」と物語上の自分の役割を知り、「己とは何であるのか」と苦悩した中将の、「しかし私は友に恵まれた」との言葉には、「自分が何者であるのか、どんな名で呼ばれたかではなく、どう生きたかのほうが遥に大切だ」と語った光の言葉への答えが見え、カインの「中ちゃん、かっこいい!」はそのまま視聴者の気持ちだった。

 1話30分、全8話。丁寧な演出(衣装や小物など含む)と役者の力量が多くの視聴者を引き付けた。特に最終話、沙織の部屋、そしてラストに繋がる横断歩道前での光と沙織の1対1の芝居は非常に見ごたえがあった。それぞれの輝きとともに、1+1は必ずしも2ではないことを実感させた千葉と伊藤。間違いなく本作は、千葉と伊藤であったから成功した。あざと可愛さが人気の千葉だが、本作のコメディ演技でさらに一皮むけた感じがある。巧さを再認識させた伊藤は、ヒロインとしての煌めきに、さらなる魅力を発揮した。また桐山も彼自身が持つもともとの色気に加え、年齢を重ねてきたゆえに醸し出される優しさに溢れ、中将をより魅力的な人物にしてみせ、入山と神尾もそれぞれにフレッシュな空気を送り込んだ。

 沙織の「100%」が叶ったラストは、実に本作らしい幕引きだった。後ろ髪を引かれるくらいが有終の美を飾ったことになると分かってはいるものの、だが、それでもその後の光と沙織を観てみたい。どこか可愛らしい安倍課長(小手伸也)らのいる沙織の職場や、中将のスピンオフもぜひ観たい。キャラクターみなを愛おしいと思える、観ているこちらまで優しくなれる作品だった。土曜の夜を温かな気持ちで満たしてくれてありがとう。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
よるドラ『いいね!光源氏くん』
NHK総合にて、5月30日(金)深夜1:00〜01:29再放送
出演:千葉雄大、伊藤沙莉、桐山漣、入山杏奈、神尾楓珠、小手伸也ほか
原作:えすとえむ
脚本:あべ美佳
音楽:小畑貴裕
演出:小中和哉 田中諭
制作統括:管原浩(NHK)、竹内敬明(テイク・ファイブ)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/hikarugenji/
公式Twitter:https://twitter.com/nhk_purpleamore

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる