千葉雄大と伊藤沙莉は最高のコンビだった 『いいね!光源氏くん』が描いた自分自身と向き合うこと

『いいね!光源氏くん』納得の最終回に

 価値観の異なる男女が同居生活の中で思いを合わせていく。本作はラブコメの王道とも言える型をなぞっていたが、“いま”の物語になったのは紛れもなく沙織のキャラクター像だろう。妹・詩織(入山杏奈)の言葉にあったように、多くの人が、自分のために、何かしらの嘘やズルをして、“正しいこと”を選択できないことが多い。詩織は“正しいこと”を選択できる姉を立派だという。しかし、沙織は「そんなつもりはない。私のために、私が決めた。私は一人の人と100%で向き合いたいから相手にも100%でいてほしい」と返す。

 沙織は常に“正しいこと”を選択する人間だったが、その中で我慢をしてきたことも人生の中で無数にあったのだ。それでも、そんな自分を卑下することはせず、受け入れた上で愛した人のために、自分のために最良の選択をすることができる。沙織は、男性に導かれ幸せを手にする、何かを犠牲にして愛を選ぶ、そういった旧時代のヒロイン像とは異なる、自分自身で新たな世界を開拓することができる、本当に格好いいヒロインだった。そんな沙織を体現できたのも、伊藤沙莉が演じたからこそだろう。

 光が去り、そのまま物語が終わったとしても納得できるものだったが、それはそれで味気ない。そんな視聴者の思いを汲んでくれたかのように、最後には花火をバックに光と沙織が再会。光との再会に涙する沙織は美しかった。新型コロナウイルス拡大の影響で多くの新作ドラマの放送が休止になる中、本作は8週間、心の癒やしを届けてくれた。千葉雄大と伊藤沙莉のこれ以上ない好演に改めて拍手を送りたい。

■放送情報
よるドラ『いいね!光源氏くん』
NHK総合にて、5月30日(金)深夜1:00〜01:29再放送
出演:千葉雄大、伊藤沙莉、桐山漣、入山杏奈、神尾楓珠、小手伸也ほか
原作:えすとえむ
脚本:あべ美佳
音楽:小畑貴裕
演出:小中和哉 田中諭
制作統括:管原浩(NHK)、竹内敬明(テイク・ファイブ)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/hikarugenji/
公式Twitter:https://twitter.com/nhk_purpleamore

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる