なぜ学園アニメーションは生徒会を描くのか? 『かぐや様は告らせたい?』を機に考える

 生徒会の設定を使うと、まず作者側が人物配置をスムーズに考えられるという利点がある。一番上に立つ生徒会長、会長の下の副会長、その2人に仕える書記と会計。物語の舞台がどんな学校であろうと、このポジションは固定的だ。これによって、生徒同士は(学年の上下は別とすれば)みんな立場が平等であれど、生徒会の役職により大人社会のような組織のヒエラルキーが発生する。また、このヒエラルキーの関係性の中でも学年の設定をいじることで、立場の逆転や相手への態度も違ってくる。

 例えば『かぐや様』では、会計の石上が1年生なので、2年生の書記の千花に頭があがらないなど、副会長よりも下の立ち位置でありながら上下関係が見える。また、『監獄学園』の副会長・白木芽衣子は、会長の栗原万里に対して敬愛の念を抱いているという具合に、組織的に上の人物に心酔する姿も描ける。こうした上下関係、尊敬の念も過剰なディフォルメを効かせることでギャグに転じることができる設定だろう。

 そして生徒会という設定が大いに役立つのは、部室が主な舞台になる関係で生徒会の役員たちが同時に同じ空間にいて、芝居の掛け合いを描きやすい点にある。部室を出たとしても行動を共にすることが多いため、キャラクターを絡ませやすいのだ。『生徒会役員共』は、会長である天草シノの下ネタギャグに、副会長の津田タカトシや会計の萩村スズがツッコミを入れるなど、ボケ&ツッコミが常にセットで見せやすい利点がある。

 単なる学園内の人気投票で生徒会役員を決める『生徒会の一存』のように、容姿の優れた美少女ばかりが役員に選ばれるなど、生徒会の在り方そのものを面白おかしく定義した作品もあり、学園ものにおける生徒会の設定が、いかにとりまわしが良い舞台装置かを感じさせる。

 さて本題の『かぐや様』だが、現在テレビアニメは生徒会長の任期を終えた白銀が、再び選挙に立候補したことから、対立候補者のミコと争いつつ会長に返り咲いたところだ。勝負に敗れたミコも白銀からの誘いで生徒会に加わり、晴れて新体制でスタートする役員室のメンバーの動向やいかに?

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
TVアニメ『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』
TOKYO MX、BS11ほかにて毎週土曜深夜に放送中
原作:赤坂アカ(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載中)
監督:畠山守
キャラクターデザイン:八尋裕子
音楽:羽岡佳
声の出演:古賀葵、古川慎、小原好美ほか
アニメーション制作:A-1 Pictures
(c)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会
公式サイト:kaguya.love
公式Twitter:@anime_kaguya

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