『レンタルなんもしない人』は心の余白を示す コロナ禍に問い直される“何もしない”ということ

『レンタルなんもしない人』は心の余白を示す

 何かをしなければならないという強迫観念につきまとわれる現代人にとって、「何もしない」ことを選択するには勇気が必要だ。何もしていないと、必然的に自分と向き合う時間が増える。コロナ禍で自宅待機の続く私たちが、何もしない状態を気づまりに感じるのは、自我と向き合うことに慣れていないからということもある。

 その点、自分の意思で「何もしない」を選んだレンタルさんは、自身の心の状態に敏感である。結果的に無理をしないというスタンスにつながっているのだが、大宮や島袋が自分を見つめ直すことができたのは、決して偶然ではないだろう。レンタルさんの存在が、彼らの心に余白のようなものを生み出していると思われる。

 一歩間違えると哲学的にもなる「何もしない」について、あくまで自分の生活スタイルとして取り入れているのがレンタルさんの良いところだ。そんなレンタルさんに絡むのが、金田(古舘寛治)と神林(葉山奨之)。古舘は2020年1月期の『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)でレンタル親父を演じていた。毎回雑誌を売りつける金田と競争社会の権化のような神林がレンタルさんをどう変えていくか注目したい。

 食や旅などを扱ったドラマでテレビ東京は優れた作品を多数輩出してきた。SNS発や「何もしない」という自己規定など、『レンタルなんもしない人』は、これら「一品もの」ドラマの新しいスタイルを提示している。外出自粛によって「何もしない」ことに積極的な意味が付加されている現在、『レンタルなんもしない人』のフラットさは、本来あるべき空白を示唆している。

※古舘寛治の「舘」は「舎へんに官」が正式表記

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『レンタルなんもしない人』
テレビ東京系にて、毎週水曜深夜0:12〜0:52放送
動画配信サービス「Paravi」「ひかりTV」にて配信予定
出演:増田貴久、比嘉愛未、葉山奨之、松川星、古舘寛治
第4話ゲスト:山口紗弥加、笠原秀幸
第5話ゲスト:小木茂光、大島さと子、藤井直樹(美 少年/ジャニーズ Jr.)、山崎ケイ(相席スタート)
第6話ゲスト:徳永えり
第7話ゲスト:西岡徳馬、喜矢武豊(ゴールデンボンバー)
第8話ゲスト:松尾諭、ヒャダイン
原作:『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』(晶文社)
原作協力:『〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。』(河出書房新社)
チーフプロデューサー:山鹿達也(テレビ東京)
プロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)、小松幸敏(テレビ東京)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、近添有賀、渡邉崇
監督:草野翔吾、タナダユキ、棚澤孝義、進藤丈広
脚本:政池洋佑、本田隆朗、竹川春菜
主題歌:NEWS「ビューティフル」(ジャニーズ エンタテイメント)
制作:テレビ東京/ジェイ・ストーム
製作著作:「レンタルなんもしない人」製作委員会
(c)「レンタルなんもしない人」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/rentalsan/
公式Twitter:@tx_rentalsan

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