遂にランキングは白紙に 映画興行「回復」までの長い道のりが始まった

映画興行「回復」までの長い道のりが始まった

 映画興行分析コラムを担当する者として、恐れていた日が遂にやってきた。興行通信社による4月20日(月)発表の映画動員ランキングは白紙。アメリカのボックスオフィスがランキングの発表を取りやめてから4週間が経って、日本も同じ状況になったことになる。4月16日に発表された、緊急事態宣言の日本全国への拡大を受けて、日本中のほぼすべての映画館が休業。一部の営業をしている映画館も、ほとんど客足が途絶えている。この状態は緊急事態宣言の最初の期限とされている5月6日まで、つまり少なくともあと2週は続く。そして、多くの人が危惧しているように、それはあくまでも「最短で」であって、緊急事態宣言下の日々が継続する可能性も大いにある。

 そして、本当の問題は緊急事態宣言がいつ解かれるかどうかではない。日本よりも早い段階で新型コロナウイルスの感染拡大が報告されて、国の取り組みによってウイルスの封じ込めに成功したとされている韓国でも、映画館に観客は戻ってきていない。日本の映画館でも3月から同様の現象が見られたが、新作の多くがこの時期の公開を見合わせていることによって、多くの映画館では旧作を上映している状態だ。先週末(4月17日〜19日)の動員ランキングは、1位『ラ・ラ・ランド』(2016年)、10位『ローガン』(2017年)、11位『レ・ミゼラブル』(2012年)、12位『天気の子』(2019年)、13位『デッドプール』(2016年)、17位『君の名は。』(2016年)、18位『ONCE ダブリンの街角で』(2007年)、20位『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(2011年)という不思議な並びに。全体の数字も極めて低く、3月の映画観客数は183万人、前年同月比12.5%で、4月に入ってからもその状況は続いている。

 一人当たりの映画館での年間映画鑑賞本数が日本の約3倍(約4.5本)あって、今回のコロナ禍においても全国的な映画館休業は回避し、4月15日には全国総選挙(投票率は28年ぶりの高水準となる66.2%)までおこなわれていた韓国においても、映画興行はここまで厳しい状況に追い込まれているのだ。アメリカや日本のように全国的に映画館が休業状態に入った国においては、客足が戻るまでさらに困難な道が予想される。

 こうした状況を踏まえれば、今後公開予定の有力な新作が公開延期の決断を下していることにも納得せざるをえない。一方、興行サイドとしては、起爆剤となる大作の公開が望まれるところだろう。アメリカではワーナー・ブラザース配給のクリストファー・ノーラン監督新作『TENET テネット』が7月17日(日本公開日は9月18日)に、ディズニー配給の『ムーラン』が3月27日の公開予定から延期されて7月24日(日本公開日は未定)に公開される予定で、今のところ公開日変更のアナウンスはされていない。

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