藤原啓治さんが父親役とケレン味溢れる悪役でみせた存在感 トニー・スタークとの共通点も

 また藤原さんは、マーベル映画シリーズにて、トニー・スターク/アイアンマン役を2008年の『アイアンマン』から2019年の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』まで務め上げた。ちょうど1カ月前に藤原さんにインタビューする機会があったというアメキャラライターの杉山すぴ豊氏は、そのときの印象を次のように振り返る。

「ダンディでイカしたちょいワル親父のような魅力が溢れ出ていて、第一印象は、本当にロバート・ダウニー・Jr.のようでした。藤原さんは、ロバート・ダウニー・Jr.が出演した『ジョニー・ビー・グッド』という作品で、一度声を吹き替えているんです。それ以降、いろいろな声優さんがロバート・ダウニー・Jr.を演じていたのですが、1作目の『アイアンマン』が封切られるときに、その縁で演じることになったそうです。藤原さんとしても、ロバート・ダウニー・Jr.との再会作ということで非常に思い入れのある役柄だったことを明かしてくれました」

 10年以上にわたる人気シリーズを演じ続けてきたことに対して、藤原さん自身も思い入れが強かったようだ。杉山氏は続ける。

「実は、アイアンマンの声を藤原さんが演じると発表された当時、アメコミファンは『野原ひろしがアイアンマンってすごい!』と、ネタとしても盛り上がっていたんです。でも振り返ってみると、ダウニー・Jr.の声を演じていたキャリアがあっての起用だったので、取ってつけたようなキャステングではなかったですよね。この先、MCUでトニー・スタークが出てくるのかはまだわかりませんが、1つの区切りまで藤原さんが演じたというのは、日本のアメコミ映画全体においてすごく大きなことだと思います」

 また藤原さんは、『アベンジャーズ』シリーズの集大成『アベンジャーズ/エンドゲーム』の際の収録秘話も明かしてくれたと杉山氏は語る。

「一区切り終えてみて、話を聞いてみると、藤原さんは『エンドゲーム』の最後のモノローグのシーンの台本を読んで、号泣してしまったそうです。『うまくできるんだろうかと不安になった』とおっしゃっていました。『インフィニティ・ウォー』の展開から考えると、ある程度大変なことになるだろうなと覚悟はしていたけど、『エンドゲーム』の台本を渡されたらすごく泣いてしまったと力を込めておっしゃっていたのが、すごく印象的でした」

 最後に杉山氏は、吹き替え声優としての藤原さんは、これまでの映画界では見られなかった動きの起点になっていると指摘する。

「例えば、映画ファンは、山田康雄さんのクリント・イーストウッドや、石丸博也さんのジャッキー・チェンのように、俳優さんの声ごとに声優さんを認識をすると思うんです。でも藤原さんの場合は、もちろんロバート・ダウニー・Jr.の声優としての印象がありつつも、それ以上にトニー・スタークというキャラクターと結びついていますよね。藤原さんはトニー・スタークなんですよ。そういった意味では、山田康雄さんとクリント・イーストウッドではなく、山田康雄さんとルパン三世の関係性に近いものがあったのかなと思います」

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