“漫画実写キャラ”から“等身大の青年”まで幅広い表現力 ドラマを軸に振り返る山崎賢人の歩み

出演ドラマを軸に振り返る山崎賢人の歩み

『陸王』(2017年/TBS系)

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 『陸王』で山崎が演じたのは、100年以上続く老舗足袋業者「こはぜ屋」の長男・宮沢大地。家業を手伝いながら就職活動を続けているが、思うようにいかず悶々とした日々を過ごす青年である。そんな中、父親であり社長の宮沢紘一(役所広司)が経営を立て直すためにランニングシューズの開発を目論む。苦難の道のりを歩む父親の姿、それを支える周りの人たちの情熱や義理人情に触れて、大地は変わっていく。

 物語前半での大地というキャラクターは、あまり生き生きとした人物ではなかった。第3話で大きなターニングポイントをむかえ、父親に向ける感情に変化が訪れると、大地という役も大きな魅力を持つようになる。大地が関わるシューズのソール素材の開発が成功の兆しを見せ、今まで反発してきた父親にその頑張りを褒めてもらうシーンでは、涙を流し心の底ではうれしく思いながらも、素直に気持ちを表せない、大地の難しい心情を見事に演じきった。好かれる役ばかりに徹する訳ではなく、人間の負の感情もリアルに表現することにより、まさに役者としての器用さを発揮した作品になった。ここから山崎演じる大地は、感情表現が豊かになり一気に輝きを増す。シューズ開発という目標に向かって挑むキラキラとした目が印象的だ。

『トドメの接吻』(2018年/日本テレビ系)

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 不気味なキス女にキスをされると死んでしまい、過去にタイムリープを繰り返すという一風変わった物語の『トドメの接吻』。山崎が演じた歌舞伎町のホストクラブのNo.1ホスト、エイトこと堂島旺太郎は、過去に起きた事件をきっかけに金に固執するクズ男という役柄だ。キスをする謎の女・佐藤宰子役は門脇麦が演じ、旺太郎が追いかける資産家令嬢・並樹美尊を『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)の新木優子、ストリートミュージシャン・春海一徳役で出演する菅田将暉は主題歌の「さよならエレジー」を担当。ストーリーの過激さと共に、菅田がドラマ主題歌を務めことも話題を呼び、本作はタイトルに“接吻”とあるだけに、様々な女性とキスをする山崎の色気に悶絶する視聴者も多かった。最終回では旺太郎と春海のキスシーンもあり、プライベートでも仲の良い菅田と山崎の濃厚でコミカルな“接吻”シーンは必見だ。

 これらの作品に続いて、『グッド・ドクター』が山崎のキャリアに加わる。さらに公開待機作にはNetflixオリジナルドラマ『今際の国のアリス』や映画『劇場』などがあり、どれも楽しみにされている話題作だ。少女漫画のヒーローを演じ正統派イケメンと呼び名の高かった時期を脱皮し、山崎はさらに難しい役へと挑戦し続ける。どんな時もまっすぐ役と向き合う姿勢から手を緩めず、体当たりで演じていることが彼の魅力の一つだろう。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記
※『L・DK』の「・」はハートマークが正式表記

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
『グッド・ドクター』
フジテレビ系にて、毎週木曜日22:00~再放送
出演:山崎賢人、上野樹里、藤木直人、戸次重幸、中村ゆり、浜野謙太、板尾創路、柄本明ほか
原作:『グッド・ドクター』(c)KBS(脚本:パク・ジェボム)
脚本:徳永友一、大北はるか
音楽:得田真裕
主題歌:『Hikari』 androp (image world/ZEN MUSIC)
脚本協力:LiLy
プロデュース: 藤野良太、金城綾香
協力プロデュース:西坂瑞城
演出: 金井紘、相沢秀幸、野田悠介
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ

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