劇場版『鬼滅の刃』で描かれる「無限列車編」はどんな物語? TVアニメを超える映像美に期待

 そして、『鬼滅の刃』という物語は、炭治郎の成長譚として捉えられる側面も強く、炭治郎の成長が物語の核と言っても恐らく過言ではないだろう。TVアニメの物語で描かれた炭治郎の物語のひとつの成果がこの「無限列車編」を通して現れており、肉体的な側面はもちろんのこと、何より炭治郎の心的側面の変化が著しい。本編では炭治郎の変化も注目してみてほしい。

 TVアニメ『鬼滅の刃』では戦闘シーンのグラフィックや美しい背景描写が魅力だったが、大スクリーンで見るその映像のクオリティは気になるところ。戦闘シーンでは、呼吸法を駆使した技が繰り出されるが、TVアニメではその炎や水の描写が美しく本作の戦闘にダイナミズムを与えており、美しさの中にも迫力のある戦闘を演出している。アニメの第19話「ヒノカミ」は特に顕著で、竈門家に代々伝わるヒノカミ神楽の炎の演出は濃淡に至るまで制作陣のこだわりが垣間見られた。TVアニメにおいても高いクオリティを誇っているのだから、映画となればなおさら期待せずにはいられないだろう。映画では煉獄杏寿郎が「炎の呼吸」を使う戦闘シーンが存分に堪能できそうだ。とはいえ、原作ではバトル要素はやや薄く、ストーリーや展開を重点的に描いていた印象もあり、煉獄杏寿郎の背景を大きく取り上げるのか、はたまた戦闘シーンを原作以上に拡充していくのかというところにも注目したい。

 この「無限列車編」の映画化の発表を聞いてからというもの、どこをオチに持ってくるのかということは、筆者しかり多くのファンが気になっていることだろう。TVアニメ2期の制作も期待される中、それに向けての橋渡しが描かれる可能性もあるだろうが、だとすればオチにどのシーンを持ってくるかによって、映画の完成度にも影響が出てくるだろう。あせらず公開日の10月16日を楽しみに待ちたい。

■川崎龍也
音楽を中心に幅広く執筆しているフリーライター。YouTubeを観ることが日課です。Twitter:@ryuya_s04

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
10月16日(金)全国公開
声の出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡、平川大輔
原作:吾峠呼世晴(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二、矢中勝、樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com
公式Twitter:@kimetsu_offhttps://twitter.com/kimetsu_off

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