『BNA ビー・エヌ・エー』は差別を扱う物語に 『プロメア』に共通する対の立ち位置に注目

『BNA』は差別を扱う物語に

 獣人と人間という対の立ち位置が存在する物語には、映画『プロメア』における、炎を生むマッドバーニッシュと彼らの炎を消すレスキューの構図を彷彿とさせる。マッドバーニッシュの存在が差別を受けていたように、アニメ『BNA』でも獣人たちは人間から差別や蔑視を受けており、反獣人デモが頻発していることも描かれている。

 肝心なのは、主人公のみちるが実は人間だったという設定だ。これは先述した対の立ち位置、どちらにも属するキャラクターということになる。第1話のラストでは、親友である日渡なずなと楽しそうに会話している様子が回顧シーンとして描かれている。みちるは突然、何らかの理由により獣人化してしまい、その理由を知るためにアニマシティにやって来た。彼女がどうして獣人になってしまったのかは全く予想ができない上、彼女との出会いを果たした狼こと大神士郎というキャラクターも、人間を過剰に嫌う理由などの背景や素性が描かれておらず、今後の展開次第で明らかになっていくだろうと思われる。

 公式サイトによると、2人の間には絆が生まれ、行動を共にしながらアニマシティの住民たちとも出会いを重ね、みちるは今まで知ることのなかった獣人の生き様を知りながら成長し、物語が進んでいくようだ。アクロバティックな作画で人気を誇るTRIGGERだが、第1話のアクションシーンでも遺憾なくその魅力を披露していた。独特な世界観を引っ提げ、ハイクオリティの技術で繰り広げられる物語の始まりに早くも今後の展開が気になってしまう。

 獣人でもあり人間でもあったみちるは、この先どんな世界をアニマシティで目撃することになるのだろうか。また、彼女は本当に「世界を変える」ことができるのか。数々の名作に続き、今シーズンも再びTRIGGERの世界に魅了されることになりそうだ。

■安藤エヌ
日本大学芸術学部文芸学科卒。文芸、音楽、映画など幅広いジャンルで執筆するライター。WEB編集を経て、現在は音楽情報メディアrockin’onなどへの寄稿を行っている。ライターのかたわら、自身での小説創作も手掛ける。

■放送情報
『BNA ビー・エヌ・エー』
フジテレビほかにて、毎週水曜24:55~25:25から順次放送
Netflixにて1話~6話独占先行配信中
声の出演:諸星すみれ、細谷佳正、長縄まりあ、石川界人、高島雅羅、村瀬迪与、乃村健次、中博史、家中宏、斉藤貴美子、多田野曜平、大塚芳忠
監督: 吉成曜
シリーズ構成: 中島かずき
コンセプトアート:Genice Chan
キャラクターデザイン:芳垣祐介
総作画監督:竹田直樹
美術監督:野村正信
色彩設計:垣田由紀子
撮影監督:設楽希
編集:坪根健太郎
音楽: mabanua
アニメーション制作:TRIGGER
(c)2020 TRIGGER・中島かずき/『BNA ビー・エヌ・エー』製作委員会

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