『エール』窪田正孝が歩み始めた“音楽のない世界” 幼なじみとの再会は何をもたらす?

『エール』幼なじみとの再会は何をもたらす?

 裕一が川俣に来てから初めて恋をした女性は、幼い頃に裕一を投げ飛ばしたとみ(白鳥玉季)だった。当時、裕福な家庭に育ったとみだが、実家が倒産しダンスホールの踊り子として生計を立てていた。思わぬ再会とほろ苦いエピソードについ胸が苦しくなる。しかし、嬉しい再会もあった。裕一が幼少期に助けてもらった鉄男との再会だ。藤堂先生(森山直太朗)の紹介で新聞記者になった鉄男は、裕一が音楽を続けていないことに対して詰め寄るが、彼の言葉が音楽への情熱に蓋をしていた裕一の心を変える好機になるのではないだろうか。

 青年期に入った裕一は内気でおとなしいものの、音楽に対する激しい気持ちを楽譜にぶつけたり、恋をしたり、様々な感情と出会っていく。こうした裕一の成長を窪田は繊細に演じる。特に印象的なのは、裕一の曲がハーモニカ倶楽部の講演会で演奏されたシーンだ。指揮をした際に映し出された裕一の苦悩の表情と顔を歪めた泣き顔は、セリフがなくともその姿だけで、視聴者を突き刺すように悲しみを伝える。泣いている表情を断片的に見ただけで、ついもらい泣きしてしまうほど裕一の感情が伝わってきた。

 次週はそんな裕一が新たな一歩を歩み出す。そして将来の伴侶、音(二階堂ふみ)との文通が始まることが明らかになっている。裕一が成長していく様子を、そして再び音楽の道に戻っていく姿を見届けていきたい。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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