演劇業界が直面するコロナウイルス問題 すべての劇場に灯りがともることを祈って

 演劇やミュージカルはどんな作品でも稽古に1カ月以上かける。基本、その期間にギャランティは発生しない。毎日、自らを追い込みながら作品を作り、やっと観客の前で上演できる日が来たと思ったら、ウイルスのせいでそれが叶わなくなる。もしくは上演することで「非常識、不謹慎」と非難を浴び、なんとかペイできるはずだった公演で多額の赤字も背負ってしまう。言葉が出ない。

 このような状況を憂いた日俳連(日本俳優連合)は、3月5日に理事長・西田敏行氏名義で内閣府と厚生労働省へ要望書を提出。相次ぐ公演やイベントの中止により、実演家たちの生活が困窮する現状を訴えた。

 3月19日に予定されている「専門家会議」の判断により、演劇やミュージカルといったライブエンターテインメント業界の今後の動きも大きく変わるだろう。確かに今は「演劇やミュージカルを観て元気になろう!」と100%無邪気に言える状況ではない。が、生の舞台には映像とはまた違うエネルギーが宿っていることも事実である。

 1日も早くこの事態が収束することを祈りつつ、またすべての劇場に灯りがともることを信じてこの文章を閉じたい。劇場は人の人生を変え、生きる力を与える可能性を持った場所なのだから。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

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