『映像研』と『SHIROBAKO』に共通するアニメーションへの賛美 それぞれの視点から紐解く

『映像研』『SHIROBAKO』の各視点

 劇場版『SHIROBAKO』はムサニが劇場用長編アニメを制作する過程を追ったドラマで、ここでもアニメ制作途上に立ちふさがる困難と、知恵を寄せ合って乗り越えようと必死にもがく宮森以下、ムサニの面々を描写する。座礁してしまうアニメ企画、約束を守らないスタジオ、権利関係の煩わしさという、アニメ業界あるあるネタを絡めつつ、果たしてムサニは新作映画を無事に納品できるのか? それはスタッフ一同が納得できる完成度なのか? と、観客の感情移入を引き寄せながら物語は進行する。そのフィナーレがどうなるかは、どうか映画館でお確かめいただきたい。テレビシリーズを観ている人なら何倍も楽しめるが、未見の人でも入り込めるような作りになっているのでご安心を。

 放送が後半戦を迎えている『映像研』は、文化祭でのロボットアニメ上映を成功させた3人が、反省点を胸に次なるステージへステップアップするドラマに入っている。大人から支援を得られる高校生ならでは強みと勢いで、難関の突破口は開けやすいが、一方の『劇場版 SHIROBAKO』のムサニは会社組織であり、それゆえに個人レベルの努力だけではどうにもならない障害がつぎつぎと襲いかかってくる。問題の解決方法ひとつ取っても、自由度の高い学生たちの部活と、商業アニメを作るプロフェッショナル集団との違いに注目しながら両作品を観るのも面白い。

 『映像研』と『劇場版 SHIROBAKO』に共通するのは、創作への賛美、困難を前に支え合うことの大切さだ。折しもアニメ制作という題材をテーマにした作品が並び立つ時期となったが、見比べてみるのも一興だろう。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■作品情報
『映像研には手を出すな!』
NHK総合にて、毎週日曜深夜24:10〜
原作:大童澄瞳(小学館『月刊!スピリッツ』連載中)
監督:湯浅政明
キャラクターデザイン:浅野直之
音楽:オオルタイチ
声の出演:伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里ほか
アニメーション制作:サイエンスSARU
(c)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
公式サイト:eizouken-anime.com
公式Twitter:@Eizouken_anime

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる