俳優・櫻井拓也の早すぎる死を悼む 多くの映画人に愛された、稀有な“自然体”の姿勢

櫻井拓也の早すぎる死を悼む

 それでも一部の映画ファンの中の、さらに一部にしか知られていない彼の映画俳優としての軌跡は、ただただ惜しいという言葉以外で表現することはできまい。本来であればピンク映画界を完全に手中に収め(すでに2018年にはピンク映画大賞で主演男優賞も獲得している)、一般映画へもどんどんと手を広げ、名バイプレイヤーとして活躍できていたのだから。フィルモグラフィを再び見てみれば、この数年で年間10本以上の作品に出演しており、急ぎすぎだよと呟きたくもなる。けれどひとつだけ救いがあるとすれば、彼の足跡は映画という形で半永久的に残されていくことができるということだ。

 現在、渋谷のユーロスペースでは彼の出演作を集めた特集上映が3月6日まで開催されている。日本映画大学時代の実習作品から、商業映画や主演を務めたピンク映画など計13作品。まだまだ全然足りないけれど、彼を知る上でまず押さえておくべき作品はひとしきり揃っている印象だ。ローバジェットで作られたこれらの作品群が、今後どのような形で保存されていくのかは気がかりではあるが、映画の中で生き続ける櫻井拓也という俳優は、ピンク映画界の市川雷蔵と言わんばかりにこれから何年も先までスクリーンを通して多くの人と出会い、そして語り継がれていくべきである。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
櫻井拓也特集上映「次の主役は、お願いします」
ユーロスペース+ユーロライブにて、2月29日(土)~3月6日(金)上映
料金:前売…1000円/当日…1200円
『花火思想』(c)SKY FISH FILMS
『恋のプロトタイプ』(c)娯楽TV
『犀の角』(提供:日本映画大学俳優科)
主催:櫻井拓也上映実行委員会
(c)櫻井拓也上映実行委員会
公式サイト http://sakurai-tokusyu.com/

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