中島裕翔と間宮祥太朗が通じ合うのはなぜ? 『僕はどこから』に立ち込める“青春のニオイ”

『僕はどこから』の“青春のニオイ”

 さらに注目すべきは、曲者だらけの脇役陣。兄に心酔する藤原の妹を演じるのは、上白石萌歌だが、タヌキ顔の天真爛漫系が見せる狂気や闇には、時折ゾッとさせられる。

 また、藤原の世話係をする権堂役の音尾琢真の愛らしさときたら。「敵」とみなすものには、怯えつつも、守るべきもののために一生懸命に吠える姿は、「優しきヤクザ」であり、弱く愛おしい番犬のようだ。実はこのドラマで一番の癒しキャラである。

 そして、ヤクザの会長の「子飼い」で、薄気味悪い笑顔をはりつけた慇懃無礼な男を演じるのは、高橋努。爪で黒板をひっかくような不快感を視聴者に与える役を、こうも上手く演じる俳優はいないのではないか。Huluオリジナルドラマ『代償』で小栗旬を苦しめ続けた「友達」の皮をかぶったサイコパスに通じる恐ろしさが、本作でも存分に披露されている。

 また、母からの執着・凌辱に耐え兼ね、大きな事件を起こす青年を演じるのは、「NIKKEI STYLE」(2018年8月からの1年間が対象)の調査で映画・連続ドラマ出演本数において20代最多を記録した売れっ子・笠松将。黙って佇んでいるだけで映画になってしまう存在感を持つ彼だが、本作では自らの替え玉を務める中島裕翔の間で、思わず息を飲むようなシンクロ感を見せている。

 威厳と冷酷さを併せ持つヤクザの会長・若林豪も、時折見せるコミカルさがやけに際立って怖い。

 また、ゲストキャラで登場する岡崎体育のヤバさは、格別。視点の定まらない目つきや、呂律の回らない危ない喋り、純粋に楽しみながら暴力をふるう様子は、非常に怖いのに、どこか『ドラゴンボール』の魔人ブウのようなおかしさもある。この人の表現の持つ怖さと愛嬌のバランスは見事だと思う。

 スリリングなストーリー展開と、達者な役者陣の芝居、映像美、青春のニオイが詰め込まれた『僕はどこから』。実は青春時代をすでに通り過ぎた大人にこそ響く、切なく美しい秀作である。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
ドラマホリック!『僕はどこから』
テレビ東京ほかにて、毎週水曜深夜0:12~0:52放送
動画配信サービス「Paravi」「ひかりTV」にて配信
出演:中島裕翔(Hey! Say! JUMP)、間宮祥太朗、上白石萌歌、音尾琢真、高橋努、岡崎体育、神保悟志、仙道敦子
原作:市川マサ『僕はどこから』全4巻 ヤンマガKC
監督:瀧悠輔、熊坂出、大内隆弘
脚本:高橋泉
主題歌:Hey! Say! JUMP「I am」(ジェイ・ストーム)
チーフプロデューサー:山鹿達也(テレビ東京)
プロデューサー:戸石紀子(テレビ東京)、北川俊樹(テレビ東京)、川西巧久(ドラマデザイン社)
協力プロデューサー:都志修平(ジェイ・ストーム)
制作:テレビ東京/ジェイ・ストーム/ドラマデザイン社
製作著作:「僕はどこから」製作委員会
(c)「僕はどこから」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/bokudoko/

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