初登場1位『AI崩壊』 「オリジナル脚本作品」崩壊時代に一矢報いるか?

『AI崩壊』、日本映画界に一矢報いるか?

 小説原作作品の人気は根強いものの、その大半はトップ40の下位を占めていることから、大ヒット狙いというよりもその手堅さから企画が通りやすいのだろうということ。コミック原作作品に関しては、まだ映画化されていない人気コミックの枯渇もあって製作本数の減少が続いていて、遂に興収10億円以上の女性向けコミックの映画化作品は1作品(それも『翔んで埼玉』なので40年近く前の作品)だけになったこと。などなど、そのリストは様々なことを浮き彫りにしているのだが、やはり注目すべきはオリジナル脚本の企画が2作品(『記憶にございません!』と『人間失格 太宰治と3人の女たち』)しかないということだろう。

 もちろん、日本映画の独立系配給作品や、さらに自主制作に近いインディーズ作品の中には、オリジナル脚本の作品はたくさんある。しかし、オリジナル脚本で全国規模のヒットを狙うのは、竹槍で戦闘機を落とすようなものであるということがわかる。今回まずまずのスタートを切った『AI崩壊』にしても、興収10億円のラインにのるかどうかは微妙なところ。同じく、先週末公開されたオリジナル脚本によるシリーズ作品『嘘八百 京町ロワイヤル』も200スクリーン以上での公開にして初登場9位と苦戦を強いられている。オリジナル脚本作品の充実は、その国の映像文化、フィクション文化の水準を支えるものだ。その視点に立つなら、日本映画はしばらく前からもう底が抜けてしまっているのかもしれない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)、2020年1月30日発売。Twitter

■公開情報
『AI崩壊』
全国公開中
出演:大沢たかお、賀来賢人、広瀬アリス、岩田剛典、高嶋政宏、芦名星、玉城ティナ、余 貴美子、松嶋菜々子、三浦友和
監督・脚本:入江悠
企画・プロデュース:北島直明
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2019映画「AI崩壊」製作委員会
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/ai-houkai/

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