初登場1位『AI崩壊』 「オリジナル脚本作品」崩壊時代に一矢報いるか?

『AI崩壊』、日本映画界に一矢報いるか?

 先週末今週の映画動員ランキングは、入江悠監督の『AI崩壊』が土日2日間で動員16万5000人、興収2億300万円をあげて初登場1位となった。シリーズものでもテレビドラマの映画化企画でもない、完全オリジナル脚本による実写日本映画が動員ランキングで1位になるのは2019年9月公開の『記憶にございません!』以来のこと。さらにその前となると、2018年6月公開の『万引き家族』まだ遡らなくてはいけない。オリジナル脚本の映画の企画が通り、それが中規模以上で公開されて、実際にヒットにまで結びつくことがいかに稀なことかがわかるだろう。NetflixやHBOやAmazonなどでクオリティの高い作品が量産されているテレビシリーズという受け皿があるという点においては大きく異なるものの、映画に限って言うなら、近年のアメリカ映画界も同じ問題を抱えている。

 さらに日本において顕著なのは、ただでさえ少ないオリジナル脚本作品の多くが、監督自身が脚本を手がけている作品であるということ。『万引き家族』(監督・脚本は是枝裕和)、『記憶にございません!』(監督・脚本は三谷幸喜)同様に、『AI崩壊』でも監督の入江悠自身が脚本を手がけている。もちろん、優れた監督でありながら優れた脚本も書けること自体は称賛すべきことだが、これは逆に言えば、監督自らが書いた脚本でなければ、さらにオリジナル脚本の映画化企画が通りにくいという実態を反映している。

 先日、日本映画製作者連盟が発表したばかりの「2019年全国映画概況」の中の、「2019年興行収入10億円以上番組 邦画」のリストがソーシャルメディア上で拡散されて(拡散元の一人は自分なのですが)、それが現在の日本映画の危機的状況を表しているとして一部で話題になった。そこには、昨年公開されて興収10億円を超えた40作品の日本映画(「洋画」という死語の対義語である「邦画」という言葉を自分は使わないようにしています)が並んでいたのだが、その内訳は下記の通り。

実写作品 24作品
アニメ作品 16作品

 実写24作品の内訳は下記の通り。

小説原作 11本
コミック原作 5作品
テレビ作品の映画化 5作品
オリジナル脚本の企画 2作品
海外作品のリメイク 1作品

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