『パラサイト』は2020年の『ROMA』か? 異例づくしの外国語映画がオスカー作品賞を獲る勝算

『パラサイト』がオスカー作品賞を獲る勝算

 『ROMA』のアカデミー賞作品賞受賞を阻んだのが「配信作品であること」だとしたら、『パラサイト』を待ち受けているのは「外国語」の壁。いままで作品賞にノミネートされた外国語作品はフランス語作品の『大いなる幻影』(1937年)からスペイン語の『ROMA/ローマ』(2018年)まで12作品で、受賞に至ったことはない。スペイン語の場合は、アメリカにおけるスペイン語人口の急速な増加事例があるので驚きはしなかったが、果たしてアカデミー会員のうち何人が韓国語を理解するだろうか。だが、興収として数字にも出ているように、『パラサイト』が観客に授ける映画的快楽やポン・ジュノの独創的かつ機密な演出は、言葉の壁を軽々と超え多くの観客を魅了した。アカデミー賞の投票権を持つ会員のうち、マジョリティを占めるのは全米映画俳優組合に属する俳優たちだ。ただし、『パラサイト』の出演俳優たちはオスカーの俳優賞にはノミネートされていない。SAGに属する俳優たちの票が投じられるのは作品賞だろうか、それともアンサンブル・キャストをまとめあげた監督へと捧げられるのだろうか。

 アカデミー賞の行方を占うサイト、Gold derbyでは作品賞で3位(1位『1917 命をかけた伝令』、2位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)、監督賞で2位(1位サム・メンデス)、脚本賞で2位(1位『ワンス~』)につけている。

 昨年10月の北米公開から、ハリウッドにじわじわと寄生を始めている『パラサイト 半地下の家族』。歴史は変えられるのか、それともまだ時期尚早なのかーー。第92回アカデミー賞の発表まで10日を切った。

■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。

■公開情報
『パラサイト 半地下の家族』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督:ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
提供:『パラサイト半地下の家族』フィルムパートナーズ
配給:ビターズ・エンド
2019年/韓国/132分/2.35:1/英題:Parasite/原題:Gisaengchung/PG-12
(c)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる