佐藤健の“魔王”ぶり、なぜ惹かれる? 『花男』から『恋つづ』まで“王道ドSキャラ”を徹底解析

ドラマ定番ドSキャラを徹底解剖

大人のドSも人気に、黒沢歩/『ダメな私に恋してください』(TBS系)

 深田恭子がヒロインを務める王道ラブコメ『ダメ恋』ではディーン・フジオカ演じる黒沢歩が大人の魅力溢れるドSキャラを演じた。ヒロイン・柴田ミチコは職なし、金なし、彼氏なしで貢ぎ体質の30歳という強烈なキャラクター。そんなミチコを甲斐甲斐しく世話し、ひょんなことから同居していた黒沢は大人女子の憧れとも言える存在だった。ドSらしくきつい口調や態度はありつつも、仕事への能力の高さや、家事など生活力も高い。一方で、長い間複雑な恋心を抱えていたなど思わず“守ってあげたくなる”魅力さえ兼ね備えている。前述の2作に比べ、スペックや価値観が大人の女性向け。同じドSでも、年齢や時代によってキャラクターの兼ね備えたスペックは変化していることがわかる。

 さらに他の作品では、『美男ですね』(TBS系)、『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)などもヒーローのドSキャラで人気を博した。多くは、優しくヒロインを包み込む“王子様タイプ”の男性が登場し、ヒロインは二人のあいだで揺れ動くという展開がベタで、「どっちのキャラクターが好みだった?」など視聴者同士で意見交換したくなる。会話のネタになりやすい展開が多いからこそ、話題に上ることも多いのだろう。

 また、物語内に“王子様”キャラを配置することで、ドSキャラが苦手な人への配慮もされている。恋愛モノで定番キャラと言いつつも、“ドS”や“俺様”がヒロインに対してのキツい態度や言動は時に批判の対象になってしまう。不快なことを言われるのが辛い、上から目線でリードされることに抵抗を感じることもあるからだ。どんな好みを持った視聴者でも楽しめるように、ドSキャラの登場する作品の多くには、多種多様な個性の男性が登場する傾向にある。

 一方で、これほどクセがありながら、なぜドSキャラに惹かれてしまうのだろうか。その理由の大半はやはり“ギャップ”の魅力が挙げられるだろう。多くはただ意地悪なだけでなく、強い愛情や、切ない過去、素直になれないだけで実は優しいなど、重要なバックボーンが隠されていることが多い。こちらだって何もただキツいだけの男性に惹かれているわけではないのだ。さらにその雄々しく攻撃的な態度が外に向かえば、身を挺して戦ってくれるケースも多い。ピンチの時に助けてくれる存在に惹かれるのはよくあることだろう。こうした魅力で“ドS”キャラは独自の居場所を確立していった。必ずしも全ての視聴者にとって理想的ではないが、独特の個性で作品を盛り上げていることは間違いないだろう。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』
TBS系にて毎週(火)22:00~22:57放送
原作:円城寺マキ『恋はつづくよどこまでも』
(小学館 プチコミックフラワーコミックスα刊)
出演:上白石萌音、佐藤健、毎熊克哉、昴生、渡邊圭祐、瀧内公美、吉川愛、堀田真由、香里奈、平岩紙、片瀬那奈、蓮佛美沙子、山本耕史
脚本:金子ありさ
演出:田中健太ほか
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:宮﨑真佐子、松本明子
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS (c)円城寺マキ/小学館
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koitsudu_tbs/
公式Twitter:@koi_tsudu
公式Instagram:koi_tsudu

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