『テセウスの船』で見せる竹内涼真の真価 持ち前の“共感力”と“熱さ”を武器に一回り大きなヒーローへ

『テセウスの船』竹内涼真の“共感力”と“熱さ”

 竹内の共感力を存分に発揮した役柄が『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の麦野初である。主人公のカホコ(高畑充希)が思いを寄せ、後に結ばれる「ハジメくん」は世間知らずなカホコの行動に振り回されながらも、カホコの最大の理解者になっていく。感情移入しにくい主人公に代わって、苦労人で世間の目を代表する初の視線からストーリーを展開することで、視聴者が『カホコ』の世界観に入っていくきっかけを作っていた。

 同様に『ブラックペアン』でも、渡海(二宮和也)と佐伯(内野聖陽)という2人の天才外科医の間で患者の命を救おうと悩む研修医の世良を演じ、作品を身近に引き寄せていた。視聴者と視線を共有するような役柄は見る側の感情移入を促し、没入感を高めるという効果がある。共感ポテンシャルの高い竹内の担う役柄は、ドラマを構成する不可欠なピースとして、意欲的なテーマを扱った作品になるほどその真価を発揮する。

 『テセウスの船』で演じる田村心は、無差別大量殺人の加害者家族として癒えない心の傷を負いながら、容疑者である父親の真実を知るために過去の世界で奔走する。大量殺人の加害者家族という設定は、同情されることはあっても世間からは共感されないポジションであり、心自身も父親への葛藤を抱く複雑な人物造形だ。これまで竹内が演じてきたイメージとは対照的なキャラクターであり、ミステリーを軸にした設定で丹念な心理描写が求められる。

 タッグを組む父親役の鈴木亮平は過去に『天皇の料理番』(TBS系)で日曜劇場に出演。結核を患った主人公の兄として体を張った迫真の演技を見せ、後に大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)の主役をつかみ取った。2人の息の合ったコンビネーションは、負の感情に覆われた家族の記憶を塗り替え、視聴者を引き込むことができるのか。持ちまえの熱と共感力に加えて役者としての総合力が問われる、竹内にとって試金石と言える作品だ。今作を通じて、ひと回り大きくなったヒーローに出会えることを期待したい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、2020年1月スタート 毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/

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